かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

盆・歳時記 樹形篇(四)

○双幹 ツインタワー的なものを想像される方もあるかも知れないが、そんなキングギドラみたいな樹もちょっと見てみたい気もする。 親の幹と子の幹と、それぞれ独立した樹芯が一本の樹のほのぼのとした輪郭を形作る。 「なぁ父ちゃん、おいらもその位の背丈が…

盆・歳時記 樹形篇(三)

○根上がり 「え? 掘るンすか? オレの足元を? 何で? バカなんすか? そこは幹じゃないっすよ。根っこっすよ?」 という樹の声が聞こえて来そうである。愛好家のヘンな愛情によって掘じくり返された根は、空気に触れて硬くなる。 「そりゃ、そうっすよ。あ…

塾生心得「文章問題がちょっと・・・」後編

文章問題でつまづく生徒に顕著なのは、彼らが非常に近視眼的な考え方で、文章題にアクセスする傾向であります。 「書いてあった数を単に足せばイイ」とか「これは一次方程式の問題だから必ずそれで解かなければならない」なんて了見であるから迷子になるので…

塾生心得「文章問題がちょっと・・・」前編

「ウチの子、計算はちゃんと出来るんですけど、文章問題がニガテなんです。」というお母さん達からのSOSを受けることがよくあります。 それでもバチあたりな私は、そんな話を半分聞き流しながら「ああ、この子は国語がニガテなんだなぁ」と、一人納得して…

盆・歳時記 樹形篇(二)

○直幹 真っ直ぐに、ひたすら真っ直ぐ空をさして伸び上がるその幹に、曲(きょく)なんて小細工は無用である。 え? 幼稚園児の描いた樹にそっくり? カンタンにつくれそう? 確かに、言われてみればその通りであるけれど、実のところ「曲の入った樹」よりも「…

盆・歳時記 樹形篇(一)

○模様木 さて、そこのあなた、突然ですが盆栽をイメージしてください! と言われた人が、何となく思い浮かべる盆栽の樹形こそが、ザ・王道の「模様木」。一億円の盆栽も、波平さんの松も、卒業式の松も、イラスト屋の盆栽もだいたいこれである。 立ち上がり…

教育雑記帳(27) 「なんで」はなんで?

教育の現場において絶対無用の言い回しだと、私が常々思っている言葉があります。 「なんでそう書くの?」「なんでそんな風にするの?」「なんでやらないの!」 私にはこんな言い回しをする教育者の気が知れません。寧ろそんな言葉を何の反省もなく吐いてい…

軍隊学校之記(16) 恩師とは何か

「○○先生、そして○○先生には、数え切れないほどの・・・」というのが、小金をもった有閑老人の自伝における決まり文句であります。 だってその歳になって自著に感謝の意を伝えても、そうした素晴らしい先達は既にして鬼籍に入っておられるわけであり、第三者の…

盆人漫録(18) 緑のチューブのあれ

それは、今回もまたはじめて同好会一同の前にデカデカと姿を現した、沼田さん所蔵の五葉松でした。 何なの? 沼田さん家はいったいどうなっているのだろう? と誰もが首を傾げる中「おっこいしょっと!」という気合いとともに十二、三号はある鉢を持ち上げる…

蝸牛独読(8)「くまさぶろう」を読む#5

四、〈忘却〉としてのくまさぶろう 「どろぼう」の上手い下手は、ごく一般的に考えて、アシが付きやすいか否かに関わってくるはずです。何の痕跡を残すことなく、お目当ての物だけ回収して警察もお手上げ、というのが上手な泥棒じゃないか、といったん定義し…

蝸牛独読(7)「くまさぶろう」を読む#4

三、自利から他利への成長譚? 前回はくまさぶろうの〈異人〉的な特質に触れながら、その「どろぼう」スキルが人の心を盗むまでに特化される過程を読んで参りました。 「やどなし」になったくまさぶろうは、その新たなスキルを頼りに、レストランで食事をす…

弟子達に与うる記(11) 半開きのドア

三連休などをことごとく自室に籠城して過ごした翌週、久しぶりの娑婆の空気を吸って授業へ出ると、親しい友人に会っても上手く言葉が出なくて驚いたことがあります。 一人っきりの部屋に籠もって、自分の内面に深く潜ってあれこれ物を考えたり、脳みそを振り…

弟子達に与うる記(10) 開く/閉じる

エレベーターみたいなタイトルですが、今回は「心のドア」にまつわる話をしてみようと思います。 大学時代とは、それぞれの主義や主張の異なる実に様々な人間と関わる時間です。そんな人々との関係から、改めて自分の現在地を相対化してみるも良し、つるんで…

些事放談「議論出来ないオトナ達」

教育に悪いものを子供に見せるな! というのは、最早古典的な台詞でありましょうが、昨今はメディアが増殖に増殖を重ねた結果、最早オトナのわれわれが子供の観ているものを全て把握することも至難の業となってきました。 テレビが一家に一台で、チャンネル…

盆人漫録(17) ビックリドッキリ盆栽

今週のビックリドッキリ盆栽はこちらです! とばかりに持ち込まれましたる「知らない樹」。 やっぱり蔵者は、わが同好会でも随一の「集め屋」の異名を取る沼田さん。 「こいづ、どっから持ってきたの?」と尋ねられても、沼田さんはニコニコしながら首を傾げ…

教育雑記帳(26) エンジンが付いた子 後編

「学ぶ」ことが出来る人間とは、エンジンの付いた車のようなものです。 自分が欲する知識を、必要に応じて得ようと算段することが出来れば、その人はどこまでも「学び」を続けることができるでしょうし、その過程においてまた、新たな課題を見つけて次なる「…

教育雑記帳(25) エンジンが付いた子 前編

教育の根幹は「教える」ことでしょうか? それは違います。 「教える」ということは、「学ぶ」ことに比べるとはるかに非効率的な手段と言わざるを得ません。ですから「子供達にたくさんのことを教えたい!」と希望に燃える教員ほど、目的と手段を取り違えた…

軍隊学校之記(15) 競争はつらいよ

特大の模造紙を貼り合わせた二メートルに及ぶ順位表がデカデカと掲示されると、人々が暗い廊下にひしめき合って自分の模試の順位をさがします。 私はこれが実にキライでありましたので、出来ることならば見たくもない。校内順位なぞ模試の個人成績表に記載さ…

国語の時間「小説の読み方」

生徒のみなさんの中には、一定数「感情移入」という方法で小説の問題を解いている人もいるようです。 作中人物の気持ちになって考える。なるほど、物語に没入して読み進めるという方策は、確かに理解を早めるものやも知れません。ですが、もしもその作中人物…

弟子達に与うる記(9)「ウチ」の限界

塾生諸氏はきっと無縁のことでありましょうが、「いじめ」なるものは「ウチ」の論理がその外側を排除しにかかる、典型的な例であります。 何らかの特徴を理由に因縁をつけて、その人物を仲間内で疎外する。するとその人物を閉め出した共犯関係にある仲間ウチ…

弟子達に与うる記(8)「オレ達」の外側

そこに外部はありますか? どうです、なかなかキャッチーな入りでしょう。はい、そこの君、どこかの金貸しのコマーシャルをパクってるとか言わないように。 私は今日は結構真面目な話をしようとしているのです。っと、そこの君は「真面目」と聞いた途端に帰…

蝸牛独読(6)「くまさぶろう」を読む#3

二、孤独なるストレンジャー くまさぶろうの「どろぼう」スキルは、前回確認した通り、どうにも人間離れしたところがあります。 前半部では物を盗み取ることに長けたスキルが、後半部では何と「ひとのこころ」を盗み取るまでに成長(?)しているのです。 それ…

盆人漫録(16) ヒマジンですが何か?

デパートにおける「何かお探しですか?」的な接客がどうにも苦手な私。 だからお客さんが樹を見ている間は、さて自分の展示の前で立ち止まってくれるかしら、と横目でお客さんの流れを確認しつつ、自分の作業をするというのが近頃の定番です。 別に派手な改…

塾生心得「それって、オフライン?」後編

勉強において大事なのは知識の量というよりむしろ、知識と知識の繋がりだと私は常々思うのです。 知識が線状に繋がっていれば、たとえそのうちのどれかを忘れているとしても、知っているところから糸を辿ってその知識を呼び戻すことが出来るのです。これぞま…