かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

育児漫遊録(36) 頸は燃えているか? Ⅱ

我が子の頸は燃えている。 このままでは頸がぐちゅぐちゅの赤ん坊になってしまう。ただならぬ危機感に苛まれつつ、私と妻は頸の炎症が進む根本的な要因を話し合った。 第一に彼の頸は例のむちむちに閉ざされていて、洗いにくいこと甚だしい。ベビーバスの中…

育児漫遊録(35) 頸は燃えているか? Ⅰ

生まれてこの方、鉗子で引っ張られた痕こそ痛々しかったけれど、あっちこっちがむっちりむちむちで、これぞ健康優良児と思い込んでいた親馬鹿は電撃的に打ち砕かれたのであった。 「頸の方がちょっとアレかなぁ。」 まだ頸もすわらない時分であったか、我が…

盆栽と暮らす(13) ちょっと見ぬ間に

厳寒期と盛夏は、とてもじゃないけれど盆栽鋏を持つ手も鈍ります。 このところは日に三度の水やりも、その都度大汗をかく始末ですから、一鉢ごとに目をやって手を掛けるなんて余裕もありません。 小さい鉢は十把一絡げにして庭木の下へ避難させ、酷烈な直射…

作文の時間(17) 読書感想文はムズイ? 後編

自分の〈読み〉を展開することとは、作品に新たな息吹を与える、謂わば二次創作的な色合いさへもつものであります。 ありきたりな「読書感想文」に散見される「すごかった」「びっくりした」「おもしろかった」も結局、何がどのような点で超越していたところ…

作文の時間(16) 読書感想文はムズイ? 前編

さて、「読書感想文」とは何でしょうか。 よくよく考えてみると、どこからどこまでが読書感想文と呼べるものなのか、私にはよく分からなくなってくるのです。 タイトルは『「ナントカ」を読んで』という感じで、その本を選んだ経緯やあらすじからはじまって…

蝸牛随筆(47) 暮れのこる雲に Ⅲ

もとは田の道である。 街区はそんなかつての畦に沿うて路をいくたりと走らせ走らせ、あらゆるところに滞りと湾曲を用意した。 古い街区、新たに拵えた街区。そのいづれもがただでさへ真っ直ぐでない路々を塞ぐように突出して、あらゆる箇所にどこかどん詰ま…

蝸牛随筆(46) 暮のこる雲に Ⅱ

katatumurinoblog.hatenablog.com 窓の外は次第に暮色を帯びてくる。 暮れ残った光は入道雲をしたたるような朱に染めながら、奥羽の山々の稜線に没しようとしている。その山際のえもいわれぬ輝きは、所詮私の筆では言い尽くすことができない。 遙かな穂波と…

蝸牛随筆(45) 暮れのこる雲に Ⅰ

暮れのこる雲のさそうようで、遠回りして帰ることにした。 何ということはない。おわりかけた日曜に用事を思い出して隣町まで出かけて帰ってきた、ただそれだけの話である。 時間を優先するのであれば、来たとおりに真っ直ぐな国道を帰ればよい。稲の穂はす…

蝸牛独読(12)「西の魔女が死んだ」を読む#4

三、立ち現れる〈死〉 言葉によって自分の周りの世界及びそこに存在する事象や他者を対象化してゆく営みとは、他ならぬまい自身の整理しきれない感情にもまた等し並みに作用していくものと思われます。 その「感受性」の強さも手伝ってか、ママの言う「扱い…

蝸牛独読(11)「西の魔女が死んだ」を読む#3

katatumurinoblog.hatenablog.com二、言葉で世界を切り分ける 前回は、まいという人物が極めて冷静に自分の周りの世界を見つめ、自らの「苦痛」より他にない現状をよく把握するまなざしを持ち得ているというところまで話を進めて来ました。 今回は彼女と言葉…

育児漫遊録(34) ミルトンよさらば Ⅲ

おかげさまで、先日我が子はついにミルトンを卒業した。つまり離乳食が開始されたのである。 物の本によると哺乳瓶等の消毒は、離乳食の開始時期ごろまでと説かれており、ということはそろそろ何だかんだと免疫が付いてくるのが、このくらいの時期なのだろう…

育児漫遊録(33) ミルトンよさらば Ⅱ

「コスパ」ばかりではない。最近は「タイパ」などと略して費用対効果ならぬ時間対効果もまた消費行動ならびに、日常生活の様々な価値基準に組み込まれることがあるらしい。 ならばこの「ミルトン」は、日に一度ならず大鍋に湯をぐらぐらと湧かす必要がない分…

育児漫遊録(32) ミルトンよさらば Ⅰ

大鍋にぐらぐら湯を沸かして、毎晩のように父や母が弟の使った哺乳瓶を煮ていたのを覚えている。 煮沸の時代からいつの間にか、世は「ミルトン」の時代になったらしい。会う親戚ごとに「哺乳瓶を毎晩」というお話しを伺ったわけであるが、ミルトンの有り難さ…

蝸牛独読(10)「西の魔女が死んだ」を読む#2

katatumurinoblog.hatenablog.com一、まいのまなざし 成長を論じるためには、成長以前の段階から分析を進めていく必要があるでしょう。 まいは、中学一年生の五月から学校に行くことが「苦痛」になりはじめます。クラス内の女子グループの中に入って上手く立…

蝸牛独読(9)「西の魔女が死んだ」を読む#1

塾生の読書感想文に付き合って、恥ずかしながらこの年になってようやく読む機会に与ったのが、この梨木香歩『西の魔女が死んだ』であります。 生きている人の小説を数えるほどしか読まない私にとって、その存在はもちろん書店や人々の口から聞いて知っていま…

蝸牛随筆(44) 盆支度 Ⅲ

かつて上方出身の友人に「下から伝い登って仏壇へ入るご先祖様の諸生霊」の話をしたところ、目を丸くして驚いていたのを覚えている。その友人曰く「実におどろおどろしい感じであるし、土着的な信仰の匂いがある。」とのこと。 「そもそも霊体が地を這ってい…

蝸牛随筆(43) 盆支度 Ⅱ

盆棚を吊りながらあれこれ片付けていると、仏壇の抽斗から線香の在庫が大量に出てくる。 線香を発見しかねた祖母が母に、無いから買ってきてくれろと頼んだのだろうが、母は母の所定の位置にしまうものであるから再び発見が遅れ・・・の無限ループが発生したの…

蝸牛随筆(42) 盆支度 Ⅰ

ヘンなゴザを買ってきて、それを仏壇から垂らしてみたり、ナマのソーメンを買ってきて野菜と一緒に吊り下げたり。 子供の時分は盆というものがとくと不思議な行事だと思っていた。今もなお不可解な点はなきにしもあらずなのであるが、クルクルと旋回する盆提…

盆栽と暮らす(12) 暑中お見舞い申し上げます

炎天燃えるような烈暑のなか、棚の盆樹たちは逞しく生を謳歌してその緑を漲らせています。 「なんともはや、見習いたいものだなぁ」と思うひ弱な人間はサッシの内、高校野球を聞きながら冷房の効いた安全圏にわだかまって情け無い感慨を述べているわけであり…

教育雑記帳(68) ハンドパワー

「ハンドパワー」。無理矢理翻訳すると手力。天岩戸をこじ開けた、あの手力己尊のそれはやはり想像を絶するものであったろうと呑気な推測をしつつ、親戚の子の握るこども鉛筆を見つめる午下がり。 私だけでしょうか、最近の幼児はどうも鉛筆を握るのが不得手…

盆栽と暮らす(11) 嗚呼、良かった。

芽切りの写真を撮っておけばよかった。と毎年のことのように後悔する私は、新芽を切られてもまた不屈の営みによって二番芽を吹かせる松の樹に比べても、一向に成長していないということなのやも知れません。 あんなに切ったにも拘わらず、棚場の松の枝先に鮮…

育児漫遊録(31) 注射の心得 Ⅴ

ついとこの間打ったばかり、なんて思っているとまた直ぐに一月後の予防接種が迫っている。目を真っ赤に充血させて世話している時には、延々と飴のように続くかに思われた時間が、殊注射となると昨日の今日みたいにやってくる。時間とは何と行き当たりばった…

育児漫遊録(30) 注射の心得 Ⅳ

「おっ、一気呑みかな?」 お医者さん監修のもとで、我が子は『ビフ』の経口投与ワクチンを脇目も振らずに一気呑みしている。珍しい味なのだろう。生まれてこの方二月あまり、乳より他のものを味わったことがないのだから無理もなかろう。 まぁ、経口ワクチ…

作文の時間(15) 私の好きなこと Ⅲ

「すごくオモシロイ」と自分でハードルを上げただけあって、確かに面白い。 作文の構成もそこそこに見切り発車した割りには、自分の「大好きなプラモ」についてたっぷり語っています。何でもそれは恐竜のプラモデルだそうで、最初に骨格を組んでから「プラス…

作文の時間(14) 私の好きなこと Ⅱ

「好き」の対象について語る言葉を持ち合わせるからこそ、それは「文化」としての長い生命を持ち合わせるのだと私は思うのです。カルチャーとサブ・カルチャーを分けるものを強いて挙げるならば、それこそが「好きについて語り得る」言葉の質と量なのではな…

作文の時間(13) 私の好きなこと Ⅰ

今年も恒例の夏の作文教室がはじまりました。 さて本日は集まった子供たちにお題を出して、それについて自由に作文を書いてもらいます。 お題はあえてざっくりと「私の好きなこと/もの」。もちろん対象は何だっていい、ちょっと好きでも大好きでもどっちだ…

一部記事の取り下げに就いて

読者諸氏へ。平素より拙ブログにお付き合いを頂き、深く御礼申し上げます。 さてこの度、退っ引きならぬ事情によりブログ記事のバックナンバーから一部の連載記事を取り下げる運びとなりました。ご愛読いただいた方、そして「星」まで付けて下さった方々には…

教育雑記帳(67) 悪筆の栄え Ⅱ

字が変わってきた子供を、これまで何人も見たことがあります。 もちろん字そのもののバランスが取れて、ヘンなクセ字が是正されるという点もありますが、何より字が変わってくる子は、たいへん計画的に字を書けるようになって来ます。 残りのスペースを塩梅…

教育雑記帳(66) 悪筆の栄え Ⅰ

字を見れば、それを書いた人物の人品が何となく想像出来るというもの。ましてや子供が書く字となると、それはほとんど自己紹介と同じようなものなのではないかと私は思うのです。 いま私の前に四則の計算をする子が二人あるとしましょう。一人は勢いに任せて…

塾生心得「八月のおたより」

「いつまでも あると思うな 夏休み」と早速、笑点の答えみたいなのを一発。その心はズバリ、お盆を過ぎると夏休みは倍速になるので気を付けましょう、という一つの真理をそこの夏休みボーイとガールにアドバイスしておきたかったのであります。 夏休み真っ盛…