2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧
波平さんのアレをいざ自分でやってみるとなると、やっぱり不安なものです。次の芽がちゃんと出てくれるだろうか、何年経っても私はおっかなびっくりであります。あんな穏やかな顔で、時にはタラちゃんの相手なんてしながら芽切り作業に勤しめるなんて、波平…
陽の当たる縁側で、波平さんがぱちりぱちりと愛培の松を鋏んでいます。 日曜日の記憶としてすり込まれたおなじみのアノ風景でありますが、実はアレ、とってもレアな作業なのです。 かつては私も盆栽をはじめるまで、盆栽というものはああして波平さんだとか…
かつて彼は紛れもない幸福の世界の住人であった。夜となく昼となくたゆたう羊水のゆりかごに、幸福な眠りを眠っていた彼は、ひょんなことから母の産道を下らねばならなかった。 下ったところは生き馬の目を抜く変転めまぐるしき世界である。ゆめゆめ油断する…
かつて私の母は、これから注射を受ける幼い私に「痛いぞ、痛いから泣くなよ。」と言って聞かせたそうである。 なぜそんなことを言ったのか尋ねたら、何と言うことはない「痛くないわけがないから」だそうである。なるほどこれは一理ある。 方便とはいえ「痛…
今や小学校から英語の勉強を義務化されているわれわれは「国際競争力」の名の下に、いったい何と競うことを企図されているのか・・・。 おそらくそれは、資本という優勝劣敗ゲームのもとに目まぐるしく変転する世界市場という場において戦える人材になることを…
なぜ英語を勉強せねばならないのでしょうか。「この頃のように日本もだんだん国際的に顔が広くなって来て、内地人と外国人とが盛んに交際する、いろんな主義やら思想が這入って来る、男は勿論女もどしどしハイカラになる、と云うような時勢になっ」たがため…
飲むワクチンがあると言う。 よくよく検めてみたところ、接種予定の五種類のうちの一つが何と『経口投与』と記載されているではないか。飲むのは「ロタワクチン」ということであるが、この「ロタ」は感染すると腹を下すウイルスなのだとか。よりによってスゴ…
一体何発打つんだ? 母子手帳を開いてまず驚いたのを覚えている。見開きに細かな字でびっしり、ありとあらゆる種類の予防接種が並んでいる。「水疱瘡」や「おたふく」「はしか」「BCG」あたりは私もやったり罹ったりした覚えがあるけれど、「ビフ」だとか…
ツンドクの極意は、とりあえず買っておくことである。 自分の専門領域であれ、馴染みのないジャンルであろうと、それがちょっとでも「ゆかしい」と感じたらとりあえず買うのです。何と非効率で不経済なやり方かと開いた口の塞がらぬ方もあるかと思いますが、…
自分のツンドクを眺めていると、「あちゃー」という気分より先に「さて、次は何を読もう」という気になる。恥ずかしながら、これが読書を進める原動力となることもしばしばであり、次のが読みたいから読みさしている本を一生懸命読んでしまおう、なんて小学…
またツンドクが増えた。 それは本屋に行ったからである。なぜ本屋に行ったかというと、月を跨いで各出版社から新刊が出る頃合いになったがためである。 読む本がカツカツで、活字に飢えていたからというわけでもなく、読んでいない本はわが家の書庫にゴマン…
「違う、なんて言う権利がおれにはない」と退くのは誰にでも出来ること。それに比して「それは違う」と叱正した人の風当たりが強くなるのもまた避けられないことでしょう。 ですが、万人がおめおめと非倫理的な行いの前に退却していてはロクな世の中になりま…
「違う」ものを「違う」と言わない場面は、よもや学習面ばかりではありますまい。子育ての場面において「私は子供の言うことを否定しません」と豪語する人がありますけれど、果たしてその子供は絶対に間違えないのでしょうか。もちろん、間違えたとしても頭…
メッサーシュミットを模したような戦闘機が二機と、近未来的なフォルムをしたヘリコプター二機とが入り混じれて我が子の頭上をぐるぐると旋回している。 もしかすると曲目の中に「ワルキューレの騎行」でもあるのじゃないかと箱書きを確認してみたが、シュー…
メリーを製造販売しようと思った企業の開発担当者が、端っから「よし、デラックスメリーをつくろう!」とするはずがない。スタンダードなメリーがあるからこそ、デラックスがあるのであって普通のラーメンがあるからこそ特盛りラーメンを拵えてみたくなるの…
いい加減蒸してきた七月の軒下で、なんとか予定通り(?)にはまとまったような気がする。 奥まったところに蟠っていた旧樹冠部を切り落とし、以前はそれほどでもないチョイ役を担っていた枝が、まさかの大出世というか、どうしようもない窮地をよくぞ救ってく…
ギブスとは言いながら、こんな物騒なギブスなどそうそうあるものではない。 枝に沿わせるようにして、一本二本と太い(4ミリくらい)の針金をあてがう。この上から麻の紐をギリギリと巻き付け締め上げ、枝に沿わせた針金をしっかりと固定してゆく。プロである…
先日『盆人漫録』で取りあげた「レスキュー」してきた赤松は、わが家の庭で目下養生と矯正の真っ最中である。 赤松は雄々しい黒松に比してやわらかな針葉と、古くなるにつれてツヤを増す赤肌とその細やかな肌具合から女松(めまつ)と呼ばれて親しまれてきたわ…
何とも手軽な世の中になったものである。 習い事を一つ辞めるにせよ、SNSの短文一本。 「塾、辞めます。手続き要りますか?」 というのを受け取ったご同業の話を聞いて、他人ごとながら頭にきた、というよりも寧ろ哀しいような諦めに似た気分を覚えた。 …
「国語」の学習において、私は子供といえども決して容赦は致しませぬ。彼らから打ち返されてきた答えを受けたら、あらゆる誤読の可能性を探り、彼らが迷い込んだ袋小路の出口へいち早く先回りし、時に綿密な対話と言葉の擦り合わせを繰り返しつつ、「違う」…
『子供が勉強で間違えても「違う」とは言わないようにする。』 この頃こんな教育方針を耳にしたのですが、これに如何ともしがたい違和感を覚えてしまう私は旧弊な人間なのでしょうか。 一応私は国語畑の人間ですから、自分の授業や指導の中では極力、子供達…
やはり盆栽は飾ってナンボ。と申しますのも、盆栽が歴とした文化芸術の一翼を担っているがためであるとともに、実のところ飾ることは愛好家的にも結構メリットが大きいと思う節が多々あるがゆえにほかなりません。 展示会に出すにせよ、お家にちょこんと飾る…
「おれのメリーはさぁ、プーさんのメリーだったんだよ。しかもデラックスのやつでさぁ。」「あっ、わたしもわたしもー!」「ぼくも同じのだったよ。なっつかしいなぁ。」 将来我が子が幼稚園か何かに通い始めた時に、同期からそんなことを自慢されて、自分の…
西松屋のどこに何が陳列してあるか、だいたい飲み込めて来た私は玩具コーナーを目指してずんずん店内を進んでいく。途中ミルク売り場を過るに及んで、ちらっと「明治ほほえみ」の値段などを確認したが、なるほど今日は特売でないとみえていつもの定価である…
「なにやら見覚えがある・・・」と、私が矯めつ眇めつその赤松の一鉢を検分せねばならなんだのは、私の記憶の中にあったその往時の姿と今の姿とが、およそかけ離れてしまっていたがためだったのです。 かつて青々と繁りかえっていた樹冠部の枝は全て枯れ上がっ…
そんなでもないさ、と思って取りかかる作業ほど泥沼化することは、ベトナム戦争の例を引くまでもない。 「鉢は、庭のあっちこっちに転がってあるから、どれでも何個でも欲しいだけ持ってってくれ」というお言葉に甘えて、お庭に分け入ったわれわれを待ってい…
二十年も前の夏はこんなに暑くるしくはなかった。と言われても、生徒のみなさんはポカンとしてしまうことでありましょう。 しかしながら、二十年も前の夏はWi-Fiもとんでいなかったし、そもそもスマホだってありませんでした。と言われたら「ウソ、マジで?…