机の高さや「ぐらつき」、傷といった諸々の検分が終わったら、最後は忘れずに椅子の善し悪しを測らなくてはならない。
もちろん、最初からガタついている椅子は論外であるが、学校の椅子の塩梅ほどムズカシイものはないと私は常々思っている。
まず、膝裏にあたる「ヘリの部分がささくれ立っていないか」は重要なチェックポイントである。これは高さと「ぐらつき」に次いで、ダメだっったら即チェンジしてしまわないと、制服なりジャージのズボンにじわじわとダメージが蓄積することになる。
ここをクリアすると今度はグッと高度な品定めがはじまる。ツルツル具合のチェックと言うべきか、あんまりツルツル過ぎてもいけないし、コーティングが剥げ過ぎているのもいけない。尻が滑るか滑らないかのあいだが、私としてはもっともしっくりくる、座り心地のよい学校の椅子なのである。
そうして苦心惨憺して、ようやく自分の椅子となるべきものを選び取っても、ゆめゆめそこで安心してはいけない。チェンジに次ぐチェンジを経て、ようやく「コレだ!」という椅子に巡り会ったと思ったら、不慮のシャッフルが起こっておじゃんになることもある。
だから椅子には必ず(自分の名前を書くのは流石に恥ずかしいので)自分だけ分かる目印を付けておく。もし自分の椅子を誰かがさも自分のものであるかのように座っていたら、放課後にそっと取り替える。
そんな人間はおそらく椅子を取り替えられても、「アレ、おれの椅子替わってるし!」という具合にはならないので安心してよい。
毎年のように教室が替わったけれど、今思えばどうして同じ机と椅子をキープしておかなかったのだろう。次のクラスも分からぬし、そんなのを取り置きなんぞしていたら、きっと先生達も煙ったく思うことだろうが、もしかすると私は次なる机と椅子との出逢いを愉しみにしていた、とは言えないだろうか。