かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

文房清玩(10) 机 Ⅱ


二、学習机
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 幼稚園を卒園する間際、離れて暮らす父方の祖母と一緒に家具屋で選んだことを覚えている。ランドセルと諸々の小道具はこちらで選んだから、机はそちらで・・・という了解が成立していたのやも知れない。ともかくも、小学校準備のキーカードはじいちゃんばあちゃんなのだろう。

 初孫ということもあってか、子供ながらに随分と立派なデスクを選んでくれたものだ、と驚いたのを覚えている。(ちなみに、弟の時は少々コンパクトになった。)

 ボクはこれでいっぱい勉強する! と硬く決心した私ではあったが、前回も述べたように私は物心ついて以来、根っからのお茶の間派の人間であったため、当初は目を輝かせて勉強部屋の真新しい学習机に齧り付いてはみたものの、元の鞘に戻るまで左程の時間は掛からなかった。

 それから長きにわたって私の学習机はいわゆる教科書置き場として活用されるところとなり、活用されるのは怒られたり何なりでお茶の間に居づらくなった日ぐらい・・・。これはよもや私に限ったことではないだろう。そこで勉強するクセというものが付かないと、鉛筆を持つ手もそわそわするようで、どうにも心持ちが悪いのである。

 結局のところ私がこの学習机に帰還したのは、受験期をよっぽど飛び越えて二十歳を過ぎたあたりである。流石に受験期はお茶の間学習を卒業した私であるが、お籠もりする場所に選んだのは、私の勉強部屋より陽当たりが良い祖父の小さな書斎だった。

 角張っていて無骨であったけれど、広々とした机が高校受験から大学受験に至るまでの私の主戦場となり、哀しきかなわが学習机はしばらくの間、私の意識の俎上から取り去られてしまっていたのである。