彼らがどこかへ走り去っていくのと入れ替わりに、別の少年が一人ストーンのところへ駆け寄ってきた。どうやらストーン遊びの一部始終を遠くから見ていたものらしい。
目を輝かせて、早速ストーンを抱えてみようとするけれど一向に持ち上がらない。さっきの彼に比べればいま少し年弱であるようだ。さて、抱えられないと分かったいま、彼はどういうストーンとの関わり方をするのかしらん。
少年のかぶったニット帽子のぼんぼりが揺れる。今彼はいつもより一〇センチほど高くなった世界を見渡している。両の手でバランスをとりながら、二本の足をピンと揃えたストーンの上。そろそろ夕風がそよぎだした野っ原に、ジャンパーの裾がはためく。
まだ乗っている。やっぱり乗っている。はて、いつまで乗っているものかしら。いくら春日とはいえ、手袋を嵌めない手の指がそろそろ夕陽みたいに赤くなってきているではないか。だのにどうしてまた、いつもより一〇センチほど風当たりの強いストーンの上に陣取って、そうひたむきに向こうを見やるものか。
と、そこへ滑り込んできたのは一台の軽自動車。路肩に停車するかしないかのうちに、少年はストーンからぴょいと飛び降りて、公園を真一文字に駆けていく。なるほど家人の迎えを待っていたものらしい。すると彼にとってストーンは、だだっ広い野っ原にあって立派な物見台としての実益を兼ねていたものとみえる。
少年が去り、再び公園の真ん中にストーンがひとつ。ぽつねんと暮れ落ちる日足を、そのつるりとした肌柄に映している。
帰ろうかしら。自分もまた立ち上がる。ふとしたゆかしさに、ストーンを一寸転がしてみようと思ったけれど、やはりストーンはここにあるのが一等しっくりしているようである。