かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆人漫録(34) ベニモンアオリンガ! Ⅱ

 そういえば、先生は去年の今時分もホワイトボードに「ベニモンアオリンガ(シンクイムシ)」と記していなかっただろうか。そんな遠い記憶が、デジャブのようによみがえる気がしないでもない月曜日の午前中。

 同好会のメンバーはそれぞれのサツキを前に、ぱちりぱちりと鋏を振るっています。大きくしたい場合は別として、サイズを維持する作業が盆栽にとっては肝となるわけで、この場合サツキの剪定は「元葉止め」という方法で、今年の芽が枝分かれした辺りか、長すぎればそのもっと手前の枝の部分まで大胆に剪り戻していきます。



 ですから、作業後の樹はほとんど丸坊主の状態。合い言葉は、すぐ次の芽が出てくるからダイジョウブ。サツキとは実に頑強な植物で、剪っても切っても次の芽がぷつぷつと吹いてくるというのが最大の強みなのです。

 そして何よりの弱みというのが、他ならぬムシやダニの害・・・。剪り進めるそばからさっそく飛び出したのはわが宿敵グンバイムシ。この羽虫、背中に畳んだ羽がちょうどお相撲や信玄公でお馴染みの軍配に似ているのですが、こいつもシンクイムシと同様、新しい葉っぱに点々と筋を付けながら食い荒らして樹の生育を邪魔した挙げ句、そのフンによって深刻なカビ被害をもたらす厄介者。

 かえすがえすも頭に来るこの虫。グンバイをフリフリしながら机上を逃げ惑うのを、私が並々ならぬ殺意で以てぷちんぷちんと潰していると、向こうの机で「なんか動いてるなぁ」と声がする。

 誰かが「見たことない虫だ」と言うと、その声にすばやく反応した平先生が「ちょっと待って!」飛んできて、確認するが早いか「こいつがシンクイムシ! こいつがベニモンアオリンガの幼虫ですよ!」と歓声に近い声を挙げる。