かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆栽

盆人漫録(39) え? 切るの?

自分が持ち込んだ教材を各人それぞれ作業することもあれば、誰かが持ってきた樹を合議にかけてやいのやいのと手を掛けることもある。時には害虫の話が各人の野菜作り相談会と化すなんてこともしばしばですが、それもまた貴重な情報交換。わが古川盆栽同好会…

盆栽と暮らす(13) ちょっと見ぬ間に

厳寒期と盛夏は、とてもじゃないけれど盆栽鋏を持つ手も鈍ります。 このところは日に三度の水やりも、その都度大汗をかく始末ですから、一鉢ごとに目をやって手を掛けるなんて余裕もありません。 小さい鉢は十把一絡げにして庭木の下へ避難させ、酷烈な直射…

盆栽と暮らす(12) 暑中お見舞い申し上げます

炎天燃えるような烈暑のなか、棚の盆樹たちは逞しく生を謳歌してその緑を漲らせています。 「なんともはや、見習いたいものだなぁ」と思うひ弱な人間はサッシの内、高校野球を聞きながら冷房の効いた安全圏にわだかまって情け無い感慨を述べているわけであり…

盆栽と暮らす(11) 嗚呼、良かった。

芽切りの写真を撮っておけばよかった。と毎年のことのように後悔する私は、新芽を切られてもまた不屈の営みによって二番芽を吹かせる松の樹に比べても、一向に成長していないということなのやも知れません。 あんなに切ったにも拘わらず、棚場の松の枝先に鮮…

盆栽と暮らす(10) また出てきてくれるかな?

波平さんのアレをいざ自分でやってみるとなると、やっぱり不安なものです。次の芽がちゃんと出てくれるだろうか、何年経っても私はおっかなびっくりであります。あんな穏やかな顔で、時にはタラちゃんの相手なんてしながら芽切り作業に勤しめるなんて、波平…

盆栽と暮らす(9) 波平さんのアレ

陽の当たる縁側で、波平さんがぱちりぱちりと愛培の松を鋏んでいます。 日曜日の記憶としてすり込まれたおなじみのアノ風景でありますが、実はアレ、とってもレアな作業なのです。 かつては私も盆栽をはじめるまで、盆栽というものはああして波平さんだとか…

盆栽百計「レスキュー赤松の改作」③

いい加減蒸してきた七月の軒下で、なんとか予定通り(?)にはまとまったような気がする。 奥まったところに蟠っていた旧樹冠部を切り落とし、以前はそれほどでもないチョイ役を担っていた枝が、まさかの大出世というか、どうしようもない窮地をよくぞ救ってく…

盆栽百計「レスキュー赤松の改作」➁

ギブスとは言いながら、こんな物騒なギブスなどそうそうあるものではない。 枝に沿わせるようにして、一本二本と太い(4ミリくらい)の針金をあてがう。この上から麻の紐をギリギリと巻き付け締め上げ、枝に沿わせた針金をしっかりと固定してゆく。プロである…

盆栽百計「レスキュー赤松の改作」①

先日『盆人漫録』で取りあげた「レスキュー」してきた赤松は、わが家の庭で目下養生と矯正の真っ最中である。 赤松は雄々しい黒松に比してやわらかな針葉と、古くなるにつれてツヤを増す赤肌とその細やかな肌具合から女松(めまつ)と呼ばれて親しまれてきたわ…

盆栽と暮らす(7) 飾ることの意義

やはり盆栽は飾ってナンボ。と申しますのも、盆栽が歴とした文化芸術の一翼を担っているがためであるとともに、実のところ飾ることは愛好家的にも結構メリットが大きいと思う節が多々あるがゆえにほかなりません。 展示会に出すにせよ、お家にちょこんと飾る…

盆人漫録(38) 赤松レスキュー Ⅲ

「なにやら見覚えがある・・・」と、私が矯めつ眇めつその赤松の一鉢を検分せねばならなんだのは、私の記憶の中にあったその往時の姿と今の姿とが、およそかけ離れてしまっていたがためだったのです。 かつて青々と繁りかえっていた樹冠部の枝は全て枯れ上がっ…

盆人漫録(37) 赤松レスキュー Ⅱ 

そんなでもないさ、と思って取りかかる作業ほど泥沼化することは、ベトナム戦争の例を引くまでもない。 「鉢は、庭のあっちこっちに転がってあるから、どれでも何個でも欲しいだけ持ってってくれ」というお言葉に甘えて、お庭に分け入ったわれわれを待ってい…

盆人漫録(36) 赤松レスキュー Ⅰ

「ウチの鉢と、残った樹を引き取ってくれ。」 という盆栽仲間からの依頼は、残念ながら一度や二度ではありません。年齢的なものや健康上の理由から、どうにも盆栽を続けていくことがままならなくなる時は、いづれの愛好家にも等しくやって来るのです。 果た…

盆人漫録(35) ベニモンアオリンガ! Ⅲ

シンクイムシという厄介者の存在は知っていたけれど、実のところその本体を目の当たりにして「こいつがシンクイムシで、ベニモンアオリンガの幼虫である。」と確認したことはありませんでした。 何せ、葉っぱの状態を見て虫がいると分かったら(いや、分かっ…

盆人漫録(34) ベニモンアオリンガ! Ⅱ

そういえば、先生は去年の今時分もホワイトボードに「ベニモンアオリンガ(シンクイムシ)」と記していなかっただろうか。そんな遠い記憶が、デジャブのようによみがえる気がしないでもない月曜日の午前中。 同好会のメンバーはそれぞれのサツキを前に、ぱちり…

盆人漫録(33) ベニモンアオリンガ! Ⅰ

われらが顧問、平先生には足かけ十年わざわざ隣町からお越しいただいている。 サツキ展後の教室は、毎年恒例の大剪定大会となるわけで、咲き終わった花を全て摘み取って、今年の春からぐんぐん伸びた芽をだいたい元の位置まで切り詰める作業に追われます。 …

盆人漫録(32) 同好会のイジ

さぁ、大変です。 今年もやってきた「令和五年度サツキ展」に、私が出すサツキが無いのは毎度のことながら、そんなことよりも大変な事態がわれわれ同好会を見舞ったのであります。 それは深刻な人手不足。不慮のアクシデントによって、会場設営や展示準備を…

盆栽と暮らす(6) ウチの中に樹!

盆栽を飾る。するとウチの中に一本、鉢に入った樹が鎮座ましますことになるのは当たり前のことであります。やり方は実に簡単。芽を出したり、花が見頃をむかえた一鉢を「今日はウチん中に来てよ」とばかりにラチって来て、泥などの汚れを拭いてやり、ひっく…

自作解題「令和五年度サツキ展」③

Ⅲ、違い棚の部(右から順に) ●イワシデ 毎度のご登場なれど、そこのところはご愛敬。なにせ六月の展示会の折りには瑞々しい若葉を漲らせ、晩秋の展示会の時期には、ねらったような紅葉で猛アピールをしてくるものだから、愛好家としてこれを飾らないわけには…

自作解題「令和五年度サツキ展」➁

●イチョウ(銀杏/公孫樹) イチョウも盆栽になるのです。 この如何にも無策丸出しの形状をご覧下さい。おっと、ゆめゆめ横から見たりしてはいけません。くれぐれも正面から、そう、ひたすら鉛筆みたいに直立するアングルからご観賞いただきたい。 どうです、…

新 盆・歳時記 ⑤

●棚場 盆栽達のホームグラウンド、それが棚場である。陽当たり、風通し、そして面積の三拍子が揃えば申し分ないけれど、不足分は各人が創意工夫と不断の努力(家族の説得)によって補う。 だからと言ってはナンであるが、棚場とは愛好家の性格を如実に映し出す…

新 盆・歳時記 ④

●愛好家のタイプ分類 ②育て屋 実生のケヤキが二百鉢。これはわが同好会において破られていない大記録である。 種からじっくり、時間と愛情をかけて育てていく喜びもあれば、挿し木をしたり数百円で手に入れた素材を丹精込めてつくっていく喜びもある。 タダ…

盆栽と暮らす(5) 樹を飾る

●ついつい忘れがちな・・・ 盆栽を「育てること」に夢中になるあまり、大事なことを忘れてしまっていた自分を発見して驚いたことがあります。それはズバリ「飾ること」であります。 良い樹をつくりたい、持ちたいという思いは、いかなる愛好家も同じ。そのため…

新 盆・歳時記 ③

●枯れる 誰かが言った。「盆栽は枯らして覚えるものである。」と。 かと言って、ガンガン積極的に枯らしても、何も得るところがない上に、棚場とやる気がドンドン寂しく減衰してくるばかりなので注意が必要である。 どうして枯れたのか、ショックを乗り越え…

新 盆・歳時記 ➁

●植え替え 樹のアンチエイジングに欠かせないのが、この植え替えである。 根の状態は、その樹の現状を映し出す鏡と言っても過言ではない。だから痛んで悪くなった部分を取り去り、幅を利かせてわだかまっている太根を追い詰める。若くて肌理細かな根の充実し…

新 盆・歳時記 ①

●水やり レベル一、枯らさないようになること。レベル二、水やりが日常の一部と化すこと。レベル三、鉢ごとに時間差で水をやりはじめる。 レベル四、離れていても一鉢ごとの乾き具合がなんとなく分かってしまう。 かくして盆栽ライフの土台は作られていく。…

盆栽と暮らす(4) 水をやる日々 Ⅲ

●あなたはディップ派? 埋める派? さて、愛する盆栽を水切れさせないための次なる手として考えられるのが「トレイに漬ける」方法であります。 底穴が浸かるくらいに水を張ったトレイに鉢を並べておけば、水が干上がらない限り、いちおう水切れを防ぐことが…

盆栽と暮らす(3) 水をやる日々 Ⅱ

●「オレの樹に水をやってくれ!」の注意点。 盆栽の水やりにおいて、こればっかりはなかなか自由の利かないものがあります。 それが「旅行」「長期出張」をはじめとする、二三日のあいだ家を空けねばならぬシーン。これは盆栽と暮らしていていちばんの泣き所…

盆栽と暮らす(2) 水をやる日々 Ⅰ

●水やりもまた 趣味家がするという盆栽というものを、これまで無縁だった自分もしてみよう、と思い立った人が第一に突き当たる障壁が「水やり」というものではないでしょうか。 盆栽は水をやれなくて枯らしてしまいそうだからサボテンにする。というのは結構…

盆栽と暮らす(1) 序

「盆栽と暮らす」ことについて、はじめて自覚的にモノを考えるようになったのは、つい最近のことです。それまでの十年は当たり前のように盆栽と生活を共にしてきたわけですが、子供が生まれたことをきっかけに、改めて「盆栽と暮らす」ことの様々な側面を見…