かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆人漫録(35) ベニモンアオリンガ! Ⅲ

 シンクイムシという厄介者の存在は知っていたけれど、実のところその本体を目の当たりにして「こいつがシンクイムシで、ベニモンアオリンガの幼虫である。」と確認したことはありませんでした。

 何せ、葉っぱの状態を見て虫がいると分かったら(いや、分かってからでは遅いのは分かっているのですが・・・)やおら殺虫剤を噴霧しだすわけであり、私がせいぜいお目に掛かるのは憎らしいグンバイムシがむんむんと飛び交わしているところくらい。

 ですから、この机の上にはたき落とされて、いじけたように丸まった茶と黒のストライプ鮮やかな毛虫の、こじんまりとまとまったフォルムは実に新鮮で、こんなのが美味しいとこ取り的に花芽を蚕食していたのかと思うと憎さこそあれ、ようやっとその正体が分かった感動も一入でありました。

 ピンセットの先で嬉しそうに虫をいじくりつつ「いやぁ、私ね」と平先生がニコニコしながら語り出すことには、「こいつを見つけるとですね、あっ! いた! ってなるんです。一時期はサツキの剪定の度に、何匹見つかるかって、瓶に入れて溜めてたこともありましたよ。はっはっはっ。みなさんに一度、実物をお見せしようと思ってたんですが、この間四リッターほど薬を撒いたところで、持って来れなかったんですよ。」

 私を含めて居合わせた一同、多分瓶の件については「マジかよ?」と思ったことでしょうが、発見の感動と達成感とが相俟った「あっ! いた!」の喜びは何となく分かる気がしました。

 自分の愛培するサツキを食い荒らす張本人は、ウォーリーを捜せみたいに鬱蒼たる葉叢に身を隠している。もちろん薬を撒けばイッパツなのだけれど、やはりそんな奴を捜して突き止めて、いや、まだいるはずだ・・・と、とことん突き止めてやりたくなるのは、サツキ愛好家の? いや、人間のサガなのやもしれません。

 先生曰く、自分もほとんど見たことがないけれど、成虫のベニモンアオリンガはたいへんに綺麗な色をしているとのこと。いつか私も見てみたいと思うけれど、自分の樹のことを考えるとそんなのに棚場を飛んでいて欲しくないとも思う六月の花後なのでありました。