かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆人漫録(37) 赤松レスキュー Ⅱ 

 そんなでもないさ、と思って取りかかる作業ほど泥沼化することは、ベトナム戦争の例を引くまでもない。

 「鉢は、庭のあっちこっちに転がってあるから、どれでも何個でも欲しいだけ持ってってくれ」というお言葉に甘えて、お庭に分け入ったわれわれを待っていたのは、叢雲のごとくに湧き出した藪蚊の大群。ちょちょっと引き取るくらい、と踏んでいた私はまさかの半袖で罷り越してしまったのが悔やまれるばかりで、あっちこっちぶっつぶつ刺されまくって、鉢など吟味している余裕がありません。

 次から次へと縋りつく藪蚊をべちべちと叩き潰して、ようやく集めた鉢の数なんと大小合わせて7,80あまり。「そんなんでイイの?」とお気遣いいただいたものの、誰も彼も自分の腕を掻くことに余念がない始末で、次なるは大事な樹の引き取り先の算段と相成った次第。

 『サツキは弱ると最初に頭がトブ』と言われるように、かつて展示会を彩ったあのサツキもこのサツキも、等しく樹冠部がトンで(枯れて)しまっています。さはれ強靱な生命力で、ひと枝ふた枝と変わらぬ花を咲かせているのを見るにつけても、「何とかせねばならない」と思うのが盆栽仲間というものであります。

 「大場さん、これ、畑に植えといてみてよ。」

 「ええ、わかりました。なんぼでも植えときますよ?」

 と、早くも話がまとまった様子。『畑植え』とはまさに最終兵器。弱った根を走らせ、新しい芽をボウボウ吹かせるグレートリセットを図るべく、サツキの大物は大場さん家の畑へと旅に出ることになったのでした。



 それにしても、樹はその一本ではありません。私も一鉢サツキを引き取ることにして、せめてもう一鉢ほど・・・と思案していた時、ふと見覚えのある赤松が目に飛び込んで来たのでした。