二十年も前の夏はこんなに暑くるしくはなかった。と言われても、生徒のみなさんはポカンとしてしまうことでありましょう。
しかしながら、二十年も前の夏はWi-Fiもとんでいなかったし、そもそもスマホだってありませんでした。と言われたら「ウソ、マジで?」となるのではないでしょうか。
デジタルネイティブと呼ばれる世代のみなさんは、そうした機器が当たり前に身の回りにあって、行くところ来るところに遍くWi-Fiの電波が飛び交っているわけですが、ちょっと想像してみてください。スマホやネット機器のない世界を。
保護者のみなさまの中には、もしかすると「ああ、それでもあの頃は結構愉しく生きていられたっけ。」という感慨を抱かれる方もあるやも知れません。デジタルがすっかり浸透した世界にあると、かつての「そうでなかった」「そうでなくてもやっていられた」世界とすっかり疎遠になってしまうのです。再開発された街並みが、往時のそれをさらりと忘れさせるように・・・。
スマホもタブレットも、ゲームもYouTubeもなければ、TwitterもLINEもない。そんな時代に戻れ、なんて言うのはトンだお門違いでありましょうが、生徒諸君に知っておいてほしいのは、そんな時代でも各人が夢中になれるものはあったし、人と人が交流する機会はちゃあんとあった、というところなのです。
時代と共に、価値観は変わります。しかしながら変わることの出来ないものだってあるのです。生身の人間と会って話したり、一緒に食卓を囲んだり・・・デジタルでは代行し得ないものこそが、いつの時代も変わることのない価値なのです。
夏休みの夕まぐれ、ちょいとスマホをほっぽり出して、ほっと一息ついたような涼風を感じてみるのはどうでしょう。どこかで鳴き出したヒグラシを聞きながら。