かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

教育雑記帳(66) 悪筆の栄え Ⅰ


 字を見れば、それを書いた人物の人品が何となく想像出来るというもの。ましてや子供が書く字となると、それはほとんど自己紹介と同じようなものなのではないかと私は思うのです。

 いま私の前に四則の計算をする子が二人あるとしましょう。一人は勢いに任せてしゅらしゅしゅしゅと数字を書き流していますが、大きい数字がスペースを圧迫して隣の解答欄にはみ出した上に、イコールの位置までどんどんなし崩しにズレていきます。しかしいま一人の子は飽くまで一定のリズムを乱さず、粛々と読みやすい数式を並べ、残りのスペースにも気を配る様子が見られます。

 この二人の正答率に大きな開きがあるのは、最早言うまでもないことで、いくら素早く数字を書いて答えを導こうが、結局の所前者は訂正に時間を取られる上に、自分で自分の字をうまく判読出来ないために、正しく訂正することもままなりません。寧ろこの子は自分の判読しづらい字によって自分の首を絞めているところが大きいのです。

 「子供だから」という理由で、このような悪筆を許容するのは、果たしてよいことなのでしょうか。私は脳科学の専門家ではありませんが、あらゆる子供達の字を継続的に診てきた経験上、やはり「悪筆」の子にはそれなりのアプローチを試みる必要があると思っています。

 もちろんそんな小さな悪筆家全員がペン習字みたいな字を書けるようになれと言っているわけではありません。問題は課題達成の最も妨げとなっている部分、つまりは所定の枠に収めて書くことや、書くときにどうしても急いてしまう、その心の状態にあるのではないでしょうか。
 
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