かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

弟子達に与うる記(14) 自分なりに

 初めて一人暮らしてみて、それに段々慣れてくると何だって融通が利かせられるようになってくるものです。

 掃除を割愛してみたり、カラオケで一晩歌ってみたり、洗濯物を干しっぱなしにして、そこから着ていくものを選びはじめるなんて無粋なマネも平気でやっちゃうようになる(諸君は絶対にマネしないように)。

 つまり何が言いたいかと申しますと、全てが自分の勝手次第で何とかなってくると「オレは自分の城で自分の力で生きてる」感が少なからず出てくるから気をつけろ、ということを言いたいのであります。

 別にそうした気分が、学業を疎かにするとか彼女が出来ない要因になるとかではありません。

 もちろん中には学費も部屋代も、奨学金を借りてバイトもして賄っている学生さんもあることでしょう。さはれ大半の学生は実家から何かしらの支援をうけて、大学生活をエンジョイしているわけであります。

 ですから「自分の力で生きてる」感というのは、ちょっとした錯覚に過ぎないのです。言うなればお釈迦様の掌の上で息巻いている孫悟空。結局のところは「与えられている」ことを、ちょっと忘却しちゃっているに過ぎないのです。

 だからと言って、学問だけに没頭せよとは申しません。それだけではいくら何でも視野が狭すぎるし、人格形成に支障を来すおそれもある。

 諸君にはぜひとも、体力と時間が有り余っている大学生だからこそ出来るアホなこともたくさんしてほしいし、人様にあまり迷惑をかけない範囲での大失敗も経験してほしいし、手痛い失恋からの猛勉強だとか、読書すら中断させる恋煩いもしてほしい。

 大事なのは、そうやって大学生という時間を「自分なりに生きてみる」ことなのだと私は思うのです。

 世界は諸君の知らない事にあふれている。せっかく「与えられている」幸せならば、これを十二分に謳歌しない手はないではありませんか。