かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

秋の展示会 自作解題①



棚飾り(漫画のカット順に)
棚は山をイメージして飾る。麓に落葉樹の林が広がり、山巓には常盤木の緑が冴える。

さて、床の間に拵えた小山に徳利でも提げて行こうよ。

○黒松 半懸崖

 安全ピンで曲付けされた苗(初心者ホイホイ)を「ムサシ」で買い求めて四年。当時は目の色変えて買ったけれど、目が肥えてくるにつれ、単調な立ち上がりと、大きなコブが寧ろネックになる。

 どうしたものかしら、と思案して首を傾げていると、「オヤ? 傾けてもイケるんじゃないか?」ってなことになり、現在の姿に。愛せない樹は愛せるようになおす。それが盆栽愛好家のコワイ「愛情」である。
 
○磯馴(ソナレ) 半懸崖

 この樹とのナレソメは、上野のグリーンクラブ。家にやってきた当初から、やり過ぎなくらいに曲がっていたのを、今度は編み込むように枝を潜らせノゾかせ、今に至る。

 こうも捻れては、もはやどうやって解けばよいものか、本人も持ち主も分からない。

 だからせめて「この枝が・・・、ああ来て、そんでもって、こう来て・・・こうか!」と目で追って、幹筋の迷路を愉しんでいただければこれ幸い。

○津山檜(ツヤマヒノキ) 株立ち

 こじんまりした株立ちの樹は、やはり一家に二鉢ほどあると重宝する。一緒にカインズで買い求めた「同期」と、夏秋の展示会に代わり番こで出演している。

 六月の展示には「白芽ヒバ」を、十月の展示には「津山檜」を。あら? これって、私の手の内を見せちゃっているのじゃないかしら。

 いやいや、そんなことはない。ほら、去年より前髪がイイ感じにブローされてて、大人っぽくなっているでしょう?

○公孫樹(イチョウ) 直幹風

 直幹「風」というところはご愛嬌。専門誌『盆栽世界』の頒布でやってきた時からずっと、この通りクセが強い姿。でも何だか憎めない。

 それは短所でもあり、特徴でもあり。否定してしまえば、元も子もないのである。

 とりあえず、自分の所へやってきた樹をおおらかに肯定する。どうせ私だって、いまだに樹を虫に食わせたり何だり失敗の絶えない半人前なのだ。まずは半人前同士、力を合わせて一人前を目指そうではないか。
 
○合歓(ネム) 斜幹

 谷崎潤一郎の小説「夢の浮橋」に登場する「合歓(ごうかん)亭」。そこで行われるらしい、美しい継母と息子の密やかな営みを暗示させるのが、この樹の特徴である。

 昼にはいっぱいに陽をうけた葉と葉が、日の暮れとともに、ひっそりと重ね合わさり眠りにおちる。嗚呼、それは如何なる夢であろうか。