かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆・歳時記 樹形篇(一)

○模様木

 さて、そこのあなた、突然ですが盆栽をイメージしてください!

 と言われた人が、何となく思い浮かべる盆栽の樹形こそが、ザ・王道の「模様木」。一億円の盆栽も、波平さんの松も、卒業式の松も、イラスト屋の盆栽もだいたいこれである。

 立ち上がりにゆらりと一曲入って(カラオケではない)、右に左に曲を振りつつ、バランスの良い選りすぐりの枝々を塩梅する。空気を読まない閂枝や、急な脇枝の割り込みはNG。そしてトリを飾るのはご存知、堂々たる樹冠である。

○斜幹

 この辺でも傾いている電信柱を見なくなった。それだけあの地震から歳月が流れたということだろうが、かつての斜めになった電信柱には「傾いてもなお」という根性が感じられた。

 巨木の影が覆い被さろうと、豪雪の重みに撓められようとも、樹木はしたたかに陽の光を目指す。斜めっていると侮るなかれ。それはひたむきな生命の姿に外ならない。
 
○懸崖

 万丈の峰に籠もる山伏のスマホも、千尋の谷を見下ろして、その断崖に屹立する樹形もその名をケンガイと言う。

 谷底を見下ろしているのが「半懸崖」、最早バンジー・ジャンプなのが「大懸崖」。

 模様木でもダメ、斜幹でもダメならいっぺん試しに鉢ごと傾けてみる。「これならイケる。」懸崖構想を固めてニンマリする愛好家。やられる樹は堪ったものじゃない。それこそ山伏になって荒行をさせられている気分であろう。