○模様木
さて、そこのあなた、突然ですが盆栽をイメージしてください!
と言われた人が、何となく思い浮かべる盆栽の樹形こそが、ザ・王道の「模様木」。一億円の盆栽も、波平さんの松も、卒業式の松も、イラスト屋の盆栽もだいたいこれである。
立ち上がりにゆらりと一曲入って(カラオケではない)、右に左に曲を振りつつ、バランスの良い選りすぐりの枝々を塩梅する。空気を読まない閂枝や、急な脇枝の割り込みはNG。そしてトリを飾るのはご存知、堂々たる樹冠である。
○斜幹
この辺でも傾いている電信柱を見なくなった。それだけあの地震から歳月が流れたということだろうが、かつての斜めになった電信柱には「傾いてもなお」という根性が感じられた。
巨木の影が覆い被さろうと、豪雪の重みに撓められようとも、樹木はしたたかに陽の光を目指す。斜めっていると侮るなかれ。それはひたむきな生命の姿に外ならない。
○懸崖
万丈の峰に籠もる山伏のスマホも、千尋の谷を見下ろして、その断崖に屹立する樹形もその名をケンガイと言う。
谷底を見下ろしているのが「半懸崖」、最早バンジー・ジャンプなのが「大懸崖」。
模様木でもダメ、斜幹でもダメならいっぺん試しに鉢ごと傾けてみる。「これならイケる。」懸崖構想を固めてニンマリする愛好家。やられる樹は堪ったものじゃない。それこそ山伏になって荒行をさせられている気分であろう。