かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆・再考 2Dと3D

 会の皆で話しているとたまに「盆栽誌に掲載されてくる写真は、やっぱり抽象的だ」という話を聞くことがあります。

 樹もまた生き物ですから、雑誌と同じ樹なんてないのは当たり前だけれど、いざそいつをマネて作ってみようとすると「オカシイ、この通りになんねぇ」ということになる。

 私もそんな経験があるもので、いずれそのナゾを明らかにしたいものであると思っていた折り、展示会にやってきた先生が、デジカメを持参してパシャリパシャリと撮影をはじめたのを発見。

 ご自分で直された樹も含めて熱心に撮っているものだから「記録写真かしら」と思って見ていると、「ちょっと見てみて」と今し方撮影したものを見せられる。

 実物と写真を見比べると「アレ?」何か違うのです。先生がおもむろに示すのは右一の枝。実物を見ると水平に出ているように見えた枝群が、写真では下がっているではありませんか。

 そこでもう一度、実物をよく検分したところ、確かに下がっているのです。ここに針金をかけて枝にはずみを持たせてやったら、さぞかし格も上がるというものでしょう。

 それにしても、人間の目というものは誤魔化されやすいものです。もしかすると、それは性能が良すぎてお馬鹿になってしまっているのやも知れません。

 実物の樹を見て、それを立体的に認識する時の目と、写真の樹を見つめる目とでは、きっと処理される情報量が違いすぎるのでありましょう。

 だからこそ、実物を前にして頑張りすぎた脳が「処理オチ」してしまう。この点においては、被写体の輪郭を正確に象ってみせた写真の方に軍配が上がるというものです。

 「2D」と「3D」。善し悪しは様々。要はいかなる趣味においても、学問においても「視点を換えてみる」ということなのです。