かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆栽教育論(6) 鉢に入った子供Ⅴ

〇変わるべきは子供?

 近年は、スマートフォン、及びSNSに依存する子供の増加が問題になっているわけですが、現今の家庭「環境」を想像すればそんなのは最早必然のことと言えます。

 もし子供をスマートフォン依存から立ち直らせたいのであれば、子供にかくかくしかじか申しても無駄なのです。何せ周りの大人がことある毎にスマホにお伺いを立てたり、そうでない時も四六時中スマホの画面に魅入られているのですから、そんな大人が「おい、スマホいじりもいい加減にしなさい」なんて言ったって説得力のかけらもありません。

 本気で子供のスマホ依存をどうにかしたいのなら、スマホだらけな周りの環境に大きなてこ入れをしないことには、スマホ漬けの子供をそうでない環境へと植え替えることは不可能なのです。

 実際のところ、スマホ依存に限らず、様々な家庭的理由から「環境的植え替え」によってしか立ちゆかない状況に追い込まれている子供は、どこの教育現場にも存在していることでしょう。枝葉をどうのこうのと整える前に、その大本の部分に勢力がなくては、好もしい方向に伸ばすための指導も甲斐がないのです。

 根を切り環境を更新するには、それなりのストレスと痛みが伴うように、人間の環境更新にもまたそれ相応の覚悟と根気が要るのです。用土を丹念に選別するように、細心の注意とともに古土を落としていくように、「子供の環境的植え替え」は子供を取り巻く周囲の大人が主導し、そして大人自らが変革を受け容れねばならないのです。

 まずは土壌から。環境をつくるのは大人であり、環境を変えるきっかけをつくりうるのは、子供のよき理解者たるべき大人を置いて他にありません。

 そして苦心の末に植え替えが済んだら、たくさんの言葉とそのキャッチボールを通して、変革に伴った痛みとストレスをケアしてあげるにしくはないでしょう。