かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆栽教育論(5) 鉢に入った子供Ⅳ

○「植え替え」に学べ

 夏の暑さでヤケてしまった根っこ、新鮮な水を求めて鉢底から飛び出した根っこ、粒子が潰れて目詰まりをおこした土・・・植え替えを行う際には、こうして悪化した鉢環境を徹底的に改善する必要があります。

 可能な限り古土を落とし、悪くなった根を切り詰め、きちんと粒子の大きさを選別した用土を適量ずつブレンドした後に、ようやく植え付けの段に入ります。根はちゃんと収まったか、樹はしっかりと固定されたか、土は適切にすき込まれているか、こうした行程の一つ一つを愛好家はそれなりに愉しんでいるわけでありますが、そのどれか一つがおざなりになっただけで、簡単に植え替えは失敗してしまいます。

 植え替えとは、樹にとってまさに生きるか死ぬかを左右する重大事なのです。根を切り土を替え、彼らが生きる環境を一新することは、大きなストレスを伴うのです。だからこそ、その後のケアは不可欠なものとなってくるわけなのですが、植え替えたばかりのこざっぱりした樹を見ていると実に心持ち好さそうに見えるのは、愛好家のサガなのやも知れません・・・。

 それはともかくとして、ここは折角の機会でありますから、ひとつ「人間の植え替え」について考えてみようと思います。

 前回も述べたように、子供の環境を変えることは土のように容易に「替え」られるものではありません。およそ家庭環境とは、子供にとって与えられるものであって、彼らが自ら作り出すことは難しいものであります。

 つまるところ、「環境」とは彼らをとりまく人間関係の如何によって決定されるところがほとんどであり、周りの大人が雁首揃えてスマートフォンを弄くっていれば、子供だっていずれはその仲間入りをするでしょうし、読書家の家の子供は物心つく頃から本を開き出すことでしょう。

 これはまさに、土壌的な問題に外ならないのです。だったら土壌の改善に乗り出さねばなりますまい。