かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆人漫録(29) 樹育てと子育て


 私のよく知る愛好家が、このところ人の親となったそうな。この間の同好会に眠そうな顔をして出席していらっしゃったので、近況をお聞きした次第であります。以下聞き書き


 このところ育てているものが増えてしまいまして、日々えらいことですよ。「育てる」っていうのは途中で止められないもんですからねぇ。樹でも子供でも「ウチに連れて来た以上、オレは生きてんだからな」って、脅迫してくるんです。確かに買ったり作ったり、種を撒いたのは私なんですけど(笑)、そのお手軽さと釣り合わないくらい重大な責任問題が発生しちゃうわけで。

 ホラ、小さい子が犬を飼いたいなんて言う時の親のアレですよ、「最後まで責任もって面倒みられんの?」ってやつです。そりゃまぁ、子供には自分のお終いの面倒を見てもらわなくちゃならないし、盆栽だってねぇ・・・自分がくたばった後に枯れちゃったら成仏もしづらいだろうから、よろしくウチの息子にはこっち方面の英才教育もしなくちゃならないよなぁ、なんて思いつつ。

 植え替えはほとんど出来てないよ。その代わりに死ぬほどおむつを替えてるし、水やりならぬミルクやりが三時間おきだから単純計算で日に八回、夜中もまとまって寝るのが難しい。家内と交代ではあるんだけど、さて火が付いたみたいに泣いたりするもんだから自分の非番の時にもたたき起こされちゃうよ。その点、盆栽はいいね。泣いたりしないし、栄養はほとんど自分で摂るし、何より教育にも手間がかからない。トンデモナイお利口さんだよ。

 そうなんだよ、ホントぐにゃぐにゃしてるから扱うにもおっかなびっくり。樹なんかむんずと掴んでゴリゴリ根っこを剪るのにね。目なら十分すわってるんだけど、ナンなら首がすわるまで針金で固定出来たらラクなのかもね。そんなことしたら、手が後ろに回っちゃうだろうけど。


 と、彼は始終こんな感じでありました。やけに饒舌であったのは、おそらく眠気のせいでしょう。さはれ、樹育てと子育ての両面作戦に乗り出した一愛好家が、これからどのように立ち回るのやら、次の会合における彼の顔色がどんなものであるのか、盆樹の樹勢をはかる要領でよくよく注意して観察を続けて参りたいと思います。

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