かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

作文の時間(14) 私の好きなこと Ⅱ


 「好き」の対象について語る言葉を持ち合わせるからこそ、それは「文化」としての長い生命を持ち合わせるのだと私は思うのです。カルチャーとサブ・カルチャーを分けるものを強いて挙げるならば、それこそが「好きについて語り得る」言葉の質と量なのではないでしょうか。

 「あなたの好きなことは何ですか?」

 生徒諸君、このお題にはこんなバック・グラウンドがあるのだヨ・・・。なんてことを思いつつ、自分の「好き」について頭を悩ます彼らの机のまわりをほっつき歩いていると、作文準備シートもそこそこにもう書き出している子を発見。

 「えっ、早っ!」とそちらに歩み寄っていくと、私の来たのを察知して「あとですごくオモシロイの見せるから」と原稿用紙を隠すのです。その不敵な笑みがグットでしたから(せめて書く前に練った構想だけ教えてほしかったけど)、「おぅ、愉しみにしてる。」といったん席を離れます。

 ぼちぼち他の子供たちも構想がまとまってきて、これから執筆に入る前に私と一度作戦会議をするわけですが、面白いことに「自分の好き」を如何に語るかの形式が二通りに分かれたのです。

 一つは自分の思い出を掻き集めて書くパターン、そしていま一つはその対象と自分の関係を繙きつつ、対象そのものについて言及していくパターン。
 やはり後者のような芸当が出来るのは高学年の子に多く、ふだん「盆栽」エッセイを書き散らしている私も「うーん」とうなってしまうような、歴とした「趣味」の世界を垣間見せる天晴れな出来でありました。

 ここまで「自分の好き」に言及出来るということは、その先にその対象を論じ究める路が用意されつつあるということ。それは勿論、学問を究める態度にも通ずるものに他なりません。いやはや作文とは何と奥の深いものでありましょうか。