かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆人漫録(36) 赤松レスキュー Ⅰ

 「ウチの鉢と、残った樹を引き取ってくれ。」



 という盆栽仲間からの依頼は、残念ながら一度や二度ではありません。年齢的なものや健康上の理由から、どうにも盆栽を続けていくことがままならなくなる時は、いづれの愛好家にも等しくやって来るのです。

 果たしてこの間生まれ出た私の息子は、私の盆栽を受け継いでくれるだろうか・・・ふと夜中にそんな取り留めのないことを考えては悶々とする夜もあったりなかったり・・・。世話がままならぬばかりに、自分の樹が自分の目の前で日に日に枯れてゆく様など誰も見たくはないのです。

 やはり盆栽愛好家の心情としては誰かちゃんと大事にしてくれる人の手に委ねたい、と思うのが自然な流れなのでありましょう。だからこそ盆栽仲間というのは心強いものであり、時には誰かにパスされたバトンを落っことさずに全力ダッシュする覚悟を持っていなければならぬのであります。

 さて今回のレスキューは、会員の中でも最古参の方から。療養中でお会いするのはコロナが始まる前以来、同好会のメンバー三人でご自宅に伺うと、案外お元気そうで「ここを建て替えでみんな壊しちゃうから、転がってる鉢だとか、まだ生きてる樹だとか、なんぼでもイイからみんな持っていっちゃってくれ。」とのこと。

 入院中にだいぶ枯らしてしまったそうですが、流石に長く鉢の中で頑張ってきた樹というものは、致命傷を負いながらも驚異的な生命力で持ちこたえています。生存した数鉢の処遇は後回しにして、われわれ実働部隊三人はけっこう朝飯前な感じで、まず鉢の発掘作業に取りかかったのでした・・・。