かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆栽と暮らす(10) また出てきてくれるかな?

 波平さんのアレをいざ自分でやってみるとなると、やっぱり不安なものです。次の芽がちゃんと出てくれるだろうか、何年経っても私はおっかなびっくりであります。あんな穏やかな顔で、時にはタラちゃんの相手なんてしながら芽切り作業に勤しめるなんて、波平さんは素敵にタフなハートの持ち主に違いありませぬ。

 毎年のことながら、自分の持っている松を「いついっか芽切りせり」と記録しておかなんだ自分のズボラを後悔させられるばかりです。

 「もう時期を逸してしまって、今切ったところで次の芽は出ずに枯れてしまうのではなかろうか・・・」「いやいや、今切らないでいつ切るの? 今でしょ?」「なんだか樹も調子が悪いような気がするし・・・」「そう言って、お前は去年芽切りをサボったろう?」「ぼさぼさになってもイイんだな?」「わかった、やる、やるよぅ。」

 という例年のぐずぐずを経て、ようやく鋏を持ち出す傍らで、生後五ヶ月の声を聞いた赤ちゃんが泣きます。育てるものが増えたなぁ、という感慨を抱く間もなくミルクを作り、やっとこさ芽を切りはじめると今度はトニック(松ヤニ)の匂いに刺激されて犬が来る・・・。

 犬の襲撃と、いつ機嫌を損ねるか分からぬマイ・サンという爆弾を抱えつつ、ぱちりぱちりとこちらもアブナイ橋を渡る。陽の当たる縁側であのように円満な「芽切り」作業とはいかないのが私の場合。まだまだ人生の修養が足りぬのでありましょう。



 何とか作業を終えて、私の松はずいぶんと寂しくなってしまいました。何せ残っているのは、去年の古い葉ばかりですから、いい加減伸び伸びになったり撚れたりしています。これでも肥培はしっかりしたつもり。さて、良い芽が吹いてくれるのか、秋風の吹く頃に私が庭先でアホみたいに悦んでいるか、この世の終わりみたいな顔して棚を眺めているか、乞うご期待。