かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

作文の時間(15) 私の好きなこと Ⅲ


 「すごくオモシロイ」と自分でハードルを上げただけあって、確かに面白い。

 作文の構成もそこそこに見切り発車した割りには、自分の「大好きなプラモ」についてたっぷり語っています。何でもそれは恐竜のプラモデルだそうで、最初に骨格を組んでから「プラスチックみたいにかたまるねんど」的なもので肉付けし、最後はなんと鱗か羽毛か(現代の恐竜研究は羽毛が主流となりつつあるようです)を選択してシールを貼り付けて完成とのこと。

 これはその「恐竜プラモ」の作り方が、その作文を読んだ私にたっぷり伝わったことの証左であります。文章の随所に「カッコイイ」が鏤められているところからも、その臨場感がひしひしと伝わってきます。

 もちろんそれを作った経験に特化した作文でありましたが、ウキウキしながら書いていた彼にとっては「自分の好き」についてそれを言語化してみる格好の機会だったのではないでしょうか。何より私はその熱量に感じ入った次第だったわけですが「語り」において必要なのはやはりこれなのです。

 作文の書き手が面白いと思って語らなければ、どうしてその作文が誰かを感動させられるでしょうか。

 たとえお題が自分の意にそぐわないものであったとしても、われわれは怯んではならないのです。何とかしてそこから「自分の好き」であるとか「興味関心」に話を持っていく豪腕敏腕こそが求められているのです。文章というものはヨソの土俵で闘うものではありません。

 そんなことをすれば必ずボロが出るし、ソツなく書いたとしても概してそれはツマラナイ、やっつけ仕事の学生レポートみたいな実に味気のないものとなるのがオチなのです。

 今回のお題作文を通して、彼らが「自分の土俵」で文章を書くこと、そして「自分の好き」を自分だけのものとせずに、言葉という形で他者に伝えることにちょっとでも目覚めてくれることを期待しつつ、さて次なるお題は何にしようかしらん。