盆・歳時記 サツキ篇
陽の光をあびて
サツキはひなたの花。ツツジは日陰の花。
からっとした陽当たりが好きで、盆栽愛好家にも虫にも好かれる人気者。それがサツキである。
一方、拙宅の露地にツツジが咲き乱れがちであるということは、そういうことで・・・。私は今年もサツキの劣等生である。ご覧あれ、サツキのさの字も飾っていない。
願わくはあのベランダに、不憫な私のサツキたちを並べたいものであるけれど、今年こそはウチの大臣に棚の設置許可を得たいものである。
サツキという沼
「ポケモン図鑑」と「サツキ図鑑」を比べたら、サツキ愛好家の必携書が圧勝してしまう。
品種改良を重ね、日夜新種が登場するサツキは、愛好家の蒐集欲を刺激して止むことがない。
西に新種アリと聞けば飛んで行って、欲しいと言い、東に定番の優樹アリと聞けば、財布をはたいて相談する。
まさに、サツキこそは「沼」である。花の姿、葉の形、みんな違ってみんな欲しくなる。さあ、そこのあなたも、新種、ゲットだぜ!
恩寵の鹿沼土
サツキ愛好家のメッカは、栃木県鹿沼市にある。ここで産出される土がなければ、サツキはここまで全国区にはなり得なかった。
軽みで水はけ良好、そしてちょいと酸性な黄色い相棒。それが鹿沼土である。
日に二、三度の水やりのたび、サツキ愛好家はそのメッカに思いを致す。
あの花木センターにはきっと私を待っているサツキがあるはずだ、と。
あと二日だけ待って・・・
「お願い。あと一週間、せめてあと二日だけ待って。」「いいや、もう待てないんだ!」「だって、そんなにしたら・・・」「おれは一年も我慢してきたんだ!」「私だってメンツがあるのよ!」「おい、何をするんだ! やめろ、おれをこんな暗いところに押し込みやがって!」
これは展示会を控えた愛好家とサツキの会話であります。
花期のサツキを飾るとなると、どうしても開花時期には神経を尖らせなければなりません。それで、こんな愛憎劇が全国津々浦々で起こるわけなのです。