盆栽とは自然を模倣する遊びです。人の手が自然の似姿をこしらえる不自然さのうちに、逆説的な自然を感じるというのが、盆栽を通して見えてくるわが国固有の文化なのかも知れません。
そんな盆栽には「樹形」と呼ばれるいくつかの型が存在します。必ずそれを踏襲しないとダメ、というようなカタ苦しい決まりはありませんが、現在定番と呼ばれるいくつかの型には、やはりそれぞれに洗練された美しさがあります。
「樹形」モデルの大半は、もちろん自然界から拝借することになります。テーマはずばり、自然の中にありそうな樹の形。だったら自然界にある樹を一本そのまま模して、鉢の中に完全再現したらどうか、というズバリなご意見もあるでしょう。
しかし、そうは問屋がおろさないのが、盆栽の面白いところなのです。実際、自然に自生する樹をそのまま採って鉢に植え込んでも、結局のところ「なんだかなぁ」な結果にしかならないのです。 さっきまで自然にあった樹であるにも拘わらず、不思議なことに、それは全然自然っぽくないし、無理矢理飾ったところで人間側の仕事の粗さばかりが寧ろ目立ってしまいます。
そもそも自然に生えていた樹を「鉢に植える」という人為が丸出しである以上、そこに何を植えたって純度百%の自然が再現されるわけはなく、それはどこまで行ってもアンバランスです。
大事なのは、この人為と自然とのバランスを塩梅してやって、それを調和させることなのです。盆栽文化における先哲が編み出した「樹形」とはまさに、人為と自然の折り合いを付けるための「定石」なのです。