かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

些事放談「サッカー雑感」

 「このところ寝不足である。」というのは、例のサッカー観戦をした人々が、ちょっと誇らしげに昨夜の不摂生を語る常套句である。

 しかしながら、私は夜中にサッカーを観ておらぬにも拘わらず、サッカーによって「このところ寝不足」なのである。間接的に、と申せばよいのかしらないが、サッカーを観戦している隣の家が夜中に「ワア」とか「オオ」とか、盛りのついた犬みたいな胴間声を張り上げるものだから、せっかく寝付いたところを、ヘンな時間にたたき起こされるのである。

 これにはほとほと困り果てていたところ、昨晩の悲鳴はどうやら「敗戦」のそれであるらしく、これでようやく馬鹿騒ぎに巻き込まれることもなくなるだろう、とホッと胸をなで下ろしたところである。

 チャンネルを回せば、あっちもこっちもサッカー三昧。サッカーの試合を三分以上観ていられない私にとっては、なぜかくも人々がこんなにも白熱するのかよく分からない。サッカーならば平生日本中のチームが試合を行っているだろうに、畢竟するところそれが「日本代表」と名の付くものであるからこそ、目の色を変えて熱中するのだろう。

 それは、私をしてよっぽど「ワールドカップ」というトレンドから遠ざからせる。この国の実に曖昧な輪郭が、「日本代表」という枠によって象られることによって、誰の手にも目にも触知可能となった時、人々はにわかナショナリズムに酔い痴れるのかもしれない。それは、私のバランス感覚からして、どうにも許容し難い現象である。

 昔から付き合いのある隣人である。品行方正、これまで取り立ててメイワク行為があったわけでもない。きっと隣の家の人々は、わが家でも「同じように」サッカーを観ていると思っているのだろう。「同じように」と思い込める魔力は侮れない。「一億総ナントカ」のスローガンが、長い眠りから覚めるような悪夢は、いやはや御免である。