かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆栽教育論(8) 実生苗と幼児教育Ⅲ

○初動の失敗に学ぶ

 自分の盆栽棚を眺めている時、いつまでもうだつの上がらない子供をみている時、私はいつも「ああ、初動が失敗しているなぁ。」という感慨を新たにしています。

 盆栽における初動とは、他ならぬ「立ち上がり」というお話しは前回までのところでひとくさり語ったわけですが、子供における初動とはまさに最初の教育、すなわち「幼児教育」を指すものであります。

 「立ち上がり」を魅せる樹にするために、実生苗のうちにしっかりと負荷をかけて、将来性のある一曲を入れるように、それは幼児にもまた同様の負荷をかけることを断行せねばならない、と私は考えます。

 とは言え、血も涙もなく幼子に針金を巻くわけではないので悪しからず。大事なのはそれを「負荷」と思わせない工夫を忘れずに、子供が一日にこなすことの出来る作業量(キャパシティ)を増やすことなのです。

 ですから私が言う「初動失敗」の子供とは、いざ勉強に本腰を入れねばならない時期に、それを許容するキャパシティが育っていない子供であり、およそ学習の負荷に耐えきれない子供の謂いに他なりません。

 幼児から読み聞かせや、親御さんとの語らいを日常的に積んできた子供と、お世辞にもそうとは言えないような子供を比べると、その許容量には明らかな開きがあるのです。途中で我慢の限界に達して爆発する子もあれば、地道に課題をこなす驚くべき忍耐を発揮する子供もあります。

 そして何より、こうしたキャパシティの差は学年が上がるにつれて歴然としてくるのです。「まだ小さいのに、そんなにムリをさせなくても・・・。」という意見をよく耳にしますが、結局の所そんな外野の杞憂こそが、子供の将来性を蔑ろにしていると言わざるを得ません。