かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

蝸牛随筆(11) チャイルドシート綺譚Ⅰ

 希有なことが起こった。

 チャイルドシートの型録をぺらぺらめくっていたところ、見慣れぬマークが付いている。何かのブランドというわけでもなく、最新式と紹介がなされたチャイルドシートには、ことごとくこの「ISO・・・」某に対応と表記がなされている。

 世の中に出回るあらゆる商品について、およそ門外漢であることを自負している私であるが、殊チャイルドシートに関しては赤子同然と申しても過言ではない。さはれここは東北、仙台から北へ一時間も下った「車文化圏」である。

 つまるところ、車がなければあらゆる面において苦労を強いられるし、妻を産婦人科へ連れて行くこともままならなければ、誕生した我が子を退院させてくることすら叶わぬ。そんなわけであるから、チャイルドシートは必要不可欠の買い物とならざるを得ないのである。

 まさに背に腹案件。型録には大量のチャイルドシートが掲載されてあり、膨大な情報とその差異が氾濫している。どれがよいのかも定かではないし、そもそもこの某マークのどういった点が優れているのかすら判然としない。この型録は錯雑とし過ぎているのだ。定義はどこか、価値判断の基準はどこにあるのか。そしてこの最高値と最安値のあいだには、如何なる懸隔があるというのか。これでは論文やら哲学書を読む方が、よっぽどラクではあるまいか。

 開く紙面ごとに幸せそうな人々が、チャイルドシートを囲んで白い歯をみせている。もちろんそのチャイルドシートはよっぽど上の等級品であり、そこに鎮座ましましている赤子は満面の笑みで、その座り心地を賞賛しているかのようである。そして何より、たいへんな違和を覚えるのはこのチャイルドシートがリビングの真ん中に据えられているという点である。何故、チャイルドシートのくせに車内にないのか、これもまた摩訶不思議である。

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