かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆栽と暮らす(1) 序

 「盆栽と暮らす」ことについて、はじめて自覚的にモノを考えるようになったのは、つい最近のことです。それまでの十年は当たり前のように盆栽と生活を共にしてきたわけですが、子供が生まれたことをきっかけに、改めて「盆栽と暮らす」ことの様々な側面を見つめ直すようになった次第であります。

 そのワケは実に単純。「育てるもの」が増えたおかげで、今まで何の考えもなしに盆栽に割いてきた時間がうまく取れなくなったところにあります。そしてまた、いわけなき哺乳動物の子を育てることと盆栽を育てることの大変さと愉しみとが、際だって対照されるようになってきたこともまたその一因と言えましょう。



 もともと私は自分の糊口を凌ぐたつきである「教育」の観点から、「盆栽をつくること」と「人の子を教育する」こととをそれほど大差なく見てきました。もちろんその既定路線は今後も変わることはないのでしょうが、教育から離れた「日々の生活」という観点からこの二つのものを眺めることは、今まで見ているようで見ていなかったものに注目するよい機会であるように思われました。

 ミルクが欲しいと赤ん坊が泣き、外の私の棚場では盆栽たちが鉢の乾きを無言のうちに訴える。にわかに慌ただしくなった日々のなかから見えてきた「盆栽が傍らにある暮らし」の一端を細々と語りつつ、盆栽人工の増加に寄与して参れたらこれ幸いであります。