かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆栽と暮らす(4) 水をやる日々 Ⅲ

●あなたはディップ派? 埋める派?

 さて、愛する盆栽を水切れさせないための次なる手として考えられるのが「トレイに漬ける」方法であります。

 底穴が浸かるくらいに水を張ったトレイに鉢を並べておけば、水が干上がらない限り、いちおう水切れを防ぐことが出来ます。流石に三日も四日もこんなことをしてしまうと、根腐れを起こして最悪の場合枯死に至るケースもありますが、夏場に半日外出する際などにも私はこの方法を採用しています。

 最近は少しばかり芸が上がって、水だけではなく濡れた多孔質の砂(富士砂)でトレイを充たして、そこへ鉢を埋める手法を採用しています。こちらの方は「漬ける」に比べて持続力こそちと劣りますが、「しっとり」が続くため根にも樹にもやさしいだろうし、何よりウェットな砂に埋めることで鉢の中の温度上昇も幾分か和らげられるように思います。



 盆栽にとって鉢とは最大の相棒でありながら、最大の敵でもあるわけで、これによって窒息してしまうこともあれば、外気で熱されたりキンキンに冷やされた鉢の温度によって生命線である根っこは常に危険に晒されているのです。庭木が平然としている横で、彼ら盆栽たちは常日頃からただならぬ緊張感とともに生存しているのであります。

 そうした盆栽たちをズブリと砂地に埋め込んでおいて、家族には「朝と夕方に満遍なく盛大に水をかけてくれろ」と言付けして出発するわけですが、やっぱりどうして旅先から「無事かしら?」と電話をいれてしまう体たらく。盆栽愛好家という人間は、いつでも半身を自分の棚場へ置いてこなくてはならないようです。

 ただ一つ、今回ご紹介した方法の弱点を挙げるとすれば、これはおそらく「小品盆栽」向けであるということでしょう。何なら酷暑の棚場から愛樹たちを日陰に一斉待避させることだってやぶさかではありませんが、鉢が小さければ小さいほど水切れの危機は付いてまわるわけで、そろそろ油断ならない季節が近づいてきたものよ、と今年最初の入道雲を眺めている次第であります。