かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

塾生心得  ただいま勉強中 Ⅳ


 新しいことを学びはじめる時、大切なことは何でしょうか。

 私は「言葉を手に入れる作業」だと思います。自分の知らないことを学ぶに及んで、まず最初の関門となるのが「言葉」なのです。

 「同じ日本語で書いてあるのに、何が書いてあるか分からない・・・」という状況になるのは、それが文法的に読めないから、あるいは読解力がないからではありません。単純にその教科、学問で使用されている「言葉」が分からないからこそ、その意味を確定することがままならなくなっているのです。

 教科に特有の専門用語、それは一般的な意味とは別にユニークな文脈をもっています。そうした言葉は科学なら科学の、文学なら文学の歴史と不可分に歩みを続けてきたものであり、ヘタをすれば本一冊分をかけてようやく本当の理解が得られるものだってあるはずです。(例えば、文学における「自然」という言葉など・・・)

 さりながら諸君、まずはご安心めされよ。教科書に登場する「言葉」は、ちゃんとその道のエキスパート達がああでもない、こうでもないと議論して定義した言葉であり、とりあえずはその語義を正確に理解してゆけば問題はない(筈な)のです。

 さて、私は購入した『自由自在 理科』(受験研究社)をひもといて「イオン」のページを開きます。そもそも「イオン」とは何か。ほうほう、電子をやったり取ったりするもの指してイオンと言うらしいが、イオンでないものもあるということなのかしらん・・・。だったら、そのイオンになるものとならないものの線引きはどこにあるのかしら・・・。

 かくして私はお勉強の冒頭から早速の迷子をきめこんでいくわけでありますが、とりあえず素直にこの素敵な参考書を読み進めて行こうではありませんか。かつての私は、そうした点において、まことに堪え性がなく、要点「だけ」を見つめておった次第であり、今こうして隅々まで目を通していくと、ちょっとしたコラムにまで理解を助ける配慮が行き届いているではありませんか。

 つまるところ、「イオン」という言葉とその仕組みを分かりたければ、たとえ遠回りでも(いや、寧ろ率先して遠回りをして)まずは全部読むべきなのです。その手間こそが、ひとつの「言葉」の定義や他の「言葉」との繋がりを用意してくれるのだと私は思うのです。