かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆栽百計「レスキュー赤松の改作」➁

 ギブスとは言いながら、こんな物騒なギブスなどそうそうあるものではない。

 枝に沿わせるようにして、一本二本と太い(4ミリくらい)の針金をあてがう。この上から麻の紐をギリギリと巻き付け締め上げ、枝に沿わせた針金をしっかりと固定してゆく。プロであると紐ではなくて「ラフィア」という植物由来の繊維を使用するが、これは麻紐に比して財布に優しくない傾向がある。

 中に筋金が入ることで、この枝の位置を操作した際にかかる圧力が分散され、思いがけぬ「ぽっきり」折れのリスクがぐんと減る。私の棚場に持ち込んだ時には、水揚げもままならぬ状態で全体的に粘りがなく、ちょっと力を掛けただけでヤバイ感触を伝えていた枝である。梅雨空の下、額に汗しながらやっとこさ巻き終えて、今度は「引っ張り」の準備に入る。

 「引っ張り」とはその名の通り、針金ではどうにも曲げられない枝を引っ張って所定の位置まで持ってくる「まんま」な荒療治である。ギブスを施した枝に針金をセットして、片一方の端をちょうどよい引き位置の枝に固定する。



 「改作やってる感」がドバドバ放出されるのは、まさにここから。枝におっかなびっくり力を掛けつつ、引き位置からペンチで緩んだ分の針金を絞っていく。ここで調子に乗ると一巻の終わりであるから、ゆっくりゆっくり「もうちょっとイケるんじゃね?」なんて樹と相談しながら、欲望丸出しの針金を絞る。

 あっちから引っ張って、こっちからも引っ張って漸く意図していた形に近づいてきた気がしてきたけれど、まだまだこれから。べろーんと間延びした枝をどうやって畳み込むか、移動させたそれぞれの枝をどの空間に収めるか、課題には事欠かない。