先日『盆人漫録』で取りあげた「レスキュー」してきた赤松は、わが家の庭で目下養生と矯正の真っ最中である。
赤松は雄々しい黒松に比してやわらかな針葉と、古くなるにつれてツヤを増す赤肌とその細やかな肌具合から女松(めまつ)と呼ばれて親しまれてきたわけであるが、盆栽愛好家の間では「ぽっきり」いきやすい樹として恐れられている一面を持っている。
長期間水通りが不十分だったと見えて、かつての樹冠部はすっかり枯れあがり、一つの太枝に対して一本か二本、若い細枝が辛うじて生きている状態。願わくは生き残った彼らを全部使って再生を図りたいところではあるが、枝同士があまりにかけ離れているし、たといそれをいづれか一方に無理矢理持ってきたところで、いつかはイヤになって剪ることになるのがオチである。
そんな風に幾度となく自分自身に言い聞かせつつ、かつての樹冠部及び、かつての利き枝を抜いて都合、枝四本からのスタートと相成った次第である。(写真はその青写真であります。)
ということはつまり、四本しかないのだからそのいずれが欠けてもイケナイのであり、枝を操作しているうちに「ぽっきり」即ちアウトなのである。普段は血も涙もないかのように樹に針金を掛ける私であるが、今度ばかりはそんなカジュアル巻きもしては居られない。
枝を構想した位置まで持ってくるのは、なかなかの荒療治であり、正直「遠い旅になりそう」という気分がハンパじゃない。そこで折れないための方策として、まず私は樹にギブスを巻くことにしたのである。