かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆栽と暮らす(12) 暑中お見舞い申し上げます

 炎天燃えるような烈暑のなか、棚の盆樹たちは逞しく生を謳歌してその緑を漲らせています。



 「なんともはや、見習いたいものだなぁ」と思うひ弱な人間はサッシの内、高校野球を聞きながら冷房の効いた安全圏にわだかまって情け無い感慨を述べているわけでありますが、日に三回、私の場合は鉢が小さいために朝に昼に夕に都合三度の水やりは欠かせません。

 最早この暑気は東北であろうと何処であろうと関係ないらしく、重い腰を上げて日中に水やりをはじめると、ものの五分で汗が吹き出します。頭からザブンと水を被りたい衝動を、眼前の盆樹たちに投影してザンブザンブと掛けてやる。

 もちろん土が乾いているというのもありますけれど、問題はそこばかりではありません。彼らが入っている鉢こそが我先にと熱されてくるものだから、それによって土も一層培乾くし、鉢に触れている根っこにも少なからざるダメージを与えるのです。

 植え替えの折りに鉢から引っこ抜いてみると、なるほどラピュタよろしく根の充満したその外周部分は黒く変色して死んでいるなんてことがよくあります。やはりこれは外気温の影響をモロに受けるのが鉢と接する部分であることを物語っていると言えるでしょう。

 鉢に入っているからこそ盆栽であり、その美しさが論じられるわけですが、鉢こそは樹にとっての制約であり、もっと言えば不倶戴天の天敵なのであります。そんなものに樹を植えるエゴイストこそが我々盆栽愛好家なのです。

 「そんなところで涼んでないで、とっとと水をかけたまえ。」と棚場の緑が訴えかけてきます。「へいへい、ただいま。」覚悟を決めて麦わら帽子を引っ掴む八月の日盛り。全国の盆栽愛好家と盆樹たち、そして読者のみなさまに暑中お見舞い申し上げます。