かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

塾生心得 モヤモヤするってことは Ⅱ


 しかしながら、同情しているばかりではラチがあきません。「同情するならアンサーをくれ!」という切実な訴えが飛んできそうなので、ここは私なりの処方箋をモヤモヤで悩める諸君に出しておかなくてはなりますまい。

 私が思うに、そのモヤモヤはおよそ無自覚なままに将来の岐路に立たされることによって生じるものであり、これは日本の義務教育にわたる構造的な問題であると考えます。いくら社会科見学をしたって職場見学をしたって、学校と社会はびっくりするほど隔絶されているわけですから、わが国の中高生は一向に社会のリアルを感じることもままならず、ヘタをすると「受験だけ考えていればいい!」という驚くほど狭隘な視野(世界)だけを提示されて、そのほかのコトは考えなくてもいいなんて環境を与えられるケースもしばしば・・・。これでは思考停止も甚だしく、教育=受験請負人という悪しき認識と構図が丸見えです。

 果たしてそれは、人間社会の一員として自ら思考し生きていく大人を育てるための教育ではありますまい。大事なのはもっと学校と社会の風通しをよくすることであり、大人が何をやっているか(ユーチューバーが何をして視聴者を稼いでいるかではなくて)をもっとよく見えるようにしないことには、「将来」なんて二文字はよっぽどの場合でなければ見えてこないのです。(寧ろ、若年層がいまユーチューバーになりたがるのは、結局のところそれが一番「オトナが何をやっているか」を見やすいためではないのか・・・。)

 だから、モヤモヤしてしまう。そのモヤモヤの根本的原因は「将来」という文字が、あまりにも抽象的で、しかも空疎であることなのです。将来のためにちょっとでもイイ学校を受験して、受かってイイ大学に行って・・・という使い古された言い回しほど、現役の中高生にとってある意味癪に障るものはないのです。

 大事なのは少しでもオトナのリアルを開示してやることであり、塾生諸君はもっと学校のソトに広がる(断じてネット世界ではない)世界に目を向けて、自分がその広大な世界の単なるとば口にいるだけの存在であることを深く自覚せねばならぬのであります。