盆栽というものを通じて、数多の樹と付き合って、泣く泣く別れたりして今にいたります。
そしてそれは、盆栽を通じて出会った人々もまた同じに思うのは、私だけでしょうか。
鬼籍に入られた方々、体の具合で足を運べなくなった方々、遠方のご子息のもとへ転居された方もいらっしゃいました。
どの方々も、その生き様が所有している樹に表れているようで、樹を見ているつもりが、その人間を見ているような気さへしてくるわけで。それは一つの心地よい錯覚であります。
拙ブログを中心として、これまで樹に関するエッセイを執筆して参りましたが、やはり自分の中には樹ばかりではなく、「人間」も書かねば何だか片手落ちであるような気分がありました。
そこでこの度『盆人漫録』と銘打って、樹と関わる中で、私が出会ったり別れたりした、忘れ得ぬ人々の姿を書いておこう、いや、遺しておこうと思い立った次第です。
読者諸氏の一興に与れば幸いです。