かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆栽と暮らす(5) 樹を飾る

●ついつい忘れがちな・・・

 盆栽を「育てること」に夢中になるあまり、大事なことを忘れてしまっていた自分を発見して驚いたことがあります。それはズバリ「飾ること」であります。

 良い樹をつくりたい、持ちたいという思いは、いかなる愛好家も同じ。そのためには盆樹の健康を第一に考えた試行錯誤、例えばウチの庭で最も陽当たりのよい場所はどこか、風通しはどうか・・・等々、如何にすれば彼らにとって最良の環境を与えてやれるのか、考えを巡らすうちに一周回って最後の結論に至る。曰く、自分が苦心して環境を整えた外の棚場で、たっぷり水と光を与えてやるにしくはない、と。



 確かにこれは盆栽の生育という観点からすれば動かしがたい結論なのでしょうが、やはり盆栽とは飾って観賞してナンボなのです。そもそも懸命に育てるのは観てくれた人に「おっ!」と言わしめるためであり、そして何より自分で自分の樹を眺めてニヤニヤしたいがためではなかったか・・・。いつしか私は一秒でも多く彼らに最適な環境を与えようと腐心するあまり、盆栽における愉しみの半分をみすみす味わずに来てしまったのです。

 水やりの度に毎日棚場で矯めつ眇めつ見てはいるけれど、それは飽くまで「見る」ことであって「飾る」ことではない。盆栽を「飾る」こととは普段の生育を眺めることとは違った趣、言うなれば余所行きの格好をした彼らを観ることなのであります。(私が言うのもナンですが。)

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