かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

育児漫遊録(22) メリー大好き男 Ⅱ


 西松屋のどこに何が陳列してあるか、だいたい飲み込めて来た私は玩具コーナーを目指してずんずん店内を進んでいく。途中ミルク売り場を過るに及んで、ちらっと「明治ほほえみ」の値段などを確認したが、なるほど今日は特売でないとみえていつもの定価である。

 玩具コーナーには、おそらくそれだけが目当てで両親のお買い物に付き合っている大小様々の子供が等間隔にならんでおり、私に負けず劣らず熱心に陳列棚を見上げ見回して「これだ!」という逸品を選んでいる。ウルトラ怪獣のソフビ人形が心なしか小さくなっているのは些か気に掛かったが、とりもあえず今の私は「メリー」をこそ求めて止まぬのである。

 果たしてメリーは訳もなく見つかった。だが、チャイルドシートの一件がそうであったように注意すべきはまさにここから。メリーはメリーでもどのグレードのものを選ぶべきか「我が子のため」というダイアモンドのように強固な意志と、限りある我が財布の資本とがギリギリとつばぜり合いを初め、それが泥仕合となる前に双方の妥協点を探らねばならない。

 一番最初に目に入ったメリーには「DX」の文字が踊っていた。外箱を検分すると熊さんやらロボットやら随分バラエティーに富んだものがたくさん吊り下がっていて、なるほどデラックスの名に恥じない。それにしてもデラックスばかりあって、デラックスでないバージョンのものはどこにあるのだろう?

 知らないうちに隣に突っ立っていた少年が、不思議そうにこちらを見るのも構わず、キョロキョロ辺りの棚に目を泳がせていると、あった。いや、あったにはあったが、おそらくこのメリーはデラックスでないメリーではなくて、寧ろデラックスよりもデラックスなメリーである。

 何せ、くまのプーさんが吊ってあるのだ。「DX」の熊さんは素性の知らない熊であったけれど、こちらの能天気なハチミツ好きのくまはワケが違う。それに伴うマージンが発生したのが丸わかりな金額にも度肝を抜かれたが、なんとこちらにもデラックスとそうでないのがあって、いよいよ私の頭の中はグルグルとメリーよろしく旋回しだしたのだった。