自分が持ち込んだ教材を各人それぞれ作業することもあれば、誰かが持ってきた樹を合議にかけてやいのやいのと手を掛けることもある。時には害虫の話が各人の野菜作り相談会と化すなんてこともしばしばですが、それもまた貴重な情報交換。わが古川盆栽同好会の例会はいつもこんな感じであります。
今日の教室にやってきたのは、大きな五葉松。蔵者曰く「この樹を整えて、秋の展示会にどうかな。分かんないけど、アハハハ!」というので、早速皆が松の木の周りに集まって検討がはじまります。
「どうかなぁ。こっちを活かすか?」
「なるほど、私ならこっちを取るかなぁ。」
「やっぱりどっちかで作るしかないよなぁ。」
しかしながら、出てきたのは蔵者にとって思いも掛けないアイデアばかり。碁には岡目八目という言葉がありますが、これはひょっとすると盆栽においても同じで、自分のでない樹が相手であると「よし、ここを切っちゃえ」「弱点はここだから、こうした方がイイ」だとか、自分の樹を相手にするときよりもよっぽど柔軟なアイデアが飛び出すからオモシロイものです。
先生も「人の樹をちょし(いぢっ)た方が勉強になる。んだから、オレはここさ来る度、いっつも勉強させてもらってます(笑)。」と仰るように、自分の樹にある遠慮がないのです。ハタから見ればこれはヒデぇ話なわけですが、そうした自分では思いつかないアイデアをもらえるという点では、やはり持ってきて合議にかけることに意味があるのです。
整えるつもりで持ってきたのに「親幹か子幹かのいづれかを切るべきだ」という話になってきて、ホワイトボードに樹形構想まで書き出す輩(私)まで出てくる。さはれ、決断は飽くまで個人の自由。現状維持か、それとも切るか・・・しばらく考えていたと思ったら、なんと切るとのこと。
「もしダメだったら、宮川くんが切れって言ったって言うから(笑)」一同大笑いで、私は自分の樹をいぢっていた手を止めて「マジすか?」とニッコリ悲鳴を挙げた次第でありました。