かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆人漫録(7) あの男を呼べ!

 その鉢は、ある男の手によって完成間もない大崎市図書館に持ち込まれたのでありました。

 山採りの、まさに山味あふれる赤松。その持ち主は久し振りに登場した沼倉さん。イベント大好き人間である沼倉さんが、わが同好会にやってくるのは例の山形旅行とか、その打ち合わせを兼ねた年度初めの総会とか。

 だから、それはある種の風物詩であり、沼倉さんの顔を見る度に、「ああ、今年もこの時期が来たものか」と、何だかお祭りごとのあるような気さへしたものです。

 その年は鼻水を垂らしながら、春未だ浅い図書館の展示スペース申請に並び、初めて大ホールの利用権を獲得した年でした。一日単位ではなくて、午前/午後それぞれの利用×三日分という形で申請しないことには、そもそも成り立たないのがわれわれの展示。

 どこか間の半日取り損なって「じゃあ、すみませんが六時間だけ撤収!」なんてこと、身体がバラバラになってしまうので出来るわけがありません。なのでそこは私と吉原さんとで、かち合ってしまった他団体とのネゴシエイトに乗り出すわけで、どうにかこうにかビカビカな床の大ホールを確保したのでした。

 でも、いつも展示をしている場所の三倍は広い。それこそわが同好会も総力戦で掛からねば、大海原に忘れ去られた離島みたいな、寂寥感が半端じゃない展示会になりかねない・・・。

 「これは、あの人さも声かげてみねくて、わがんねぇンでねすかや?(意訳「あの男を呼べ!」)」という副会長徳江さんの発案で、あの沼倉さんにも、緊急招集がかかった次第なのでありました。

 さはれ、普段の盆栽教室には滅多に顔を出さない沼倉さん。私もかつての山形行きのバスの中では、「沼倉さん、それ絶対詐欺に遭ってるし!」とか「沼倉さん、それ絶対社長にハメられてるってば!」という壮絶な話の合間に、ちょいと所有の樹の話を聞いたくらい。

 いったいどんな樹を持ってくるやら、誰にも分からない。とりあえず徳江さんが問い合わせたらまさかのOK。搬入の日取りと時間を事細かに伝え、さていよいよわれわれは運命の搬入の日を迎えたのでありました。
 
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