生まれてこの方、鉗子で引っ張られた痕こそ痛々しかったけれど、あっちこっちがむっちりむちむちで、これぞ健康優良児と思い込んでいた親馬鹿は電撃的に打ち砕かれたのであった。
「頸の方がちょっとアレかなぁ。」
まだ頸もすわらない時分であったか、我が子の便秘が気になって受診した小児医院で「そっちよりこっちの方が心配」であると指摘された我が子の頸は、ほんのり赤く色づいていた。
毎日風呂へ入れて、頸もちゃんと洗っていた「つもり」だったにも拘わらず、何となく赤くなってきたことにはもちろん気づいていた。ただ入浴におけるまさにネックは、彼のネックがあまりにむちむちしているため、どこまで指を突っ込んでよいものかと躊躇われるところにあった。
炎症を抑える一番弱い塗り薬をもらって、その晩から早速せっせと塗り始める。一日一度であった風呂も朝と晩と、妻と手分けして日に二度浸からせて頸を清潔に保つ試みがはじまったのであるが、頸の容態はみるみる悪化の一途を辿ったのである。
こんなに念を入れて洗っているのに、なぜ赤みの侵攻は止まらないのか・・・。所々に発疹が出来て、中にはそれが爛れて汁気が出ているものまであるし、この間受診した時には何でもなかったところまでもが炎症によってじわじわと領土化されている始末。
それでも彼は痛がりもせず痒がりもせず、二日にいっぺんの割で盛大に宿便を解消しては、むちむちの顎下に患部をひた隠しにして完爾と笑っている。親にはいよいよ余裕がないというのに、何という豪胆さであろうか。
我が子の頸は燃えていた。