盆人漫録
まだ私が自分の軽トラを買う前、展示会の準備で徳江さんの軽トラを運転することになった時のことでした。 自動車学校を卒業して以来、一度もまわしたことがなかったマニュアル車。それを急に預けられて悪戦苦闘、ギッコンバッタンしながらも、何とかかんとか…
今よりもまだ頭数に余裕があった当時、展示会の当直は二人一組。 これが一人だと結構ツラいもので、このご時世だと検温と連絡先の記入をしながら、「この樹って、何ていうの?」とか、お客さんの質問にも応えなければいけません。 いつものこぢんまりした展…
さつきの咲き誇る季節。朝霧に包まれた図書館の駐車場に、会長さんの車がそろりと入ってくる。 まだ作戦開始時刻まで四時間もあるけれど、段取りを重んじる会長さんの作戦行動は既に始まっていて、車から降り立った会長さんは、颯爽と歩いてお家に帰る。 会…
その鉢は、ある男の手によって完成間もない大崎市図書館に持ち込まれたのでありました。 山採りの、まさに山味あふれる赤松。その持ち主は久し振りに登場した沼倉さん。イベント大好き人間である沼倉さんが、わが同好会にやってくるのは例の山形旅行とか、そ…
気がつけば、私が入った頃とはおよそ顔ぶれが変わってしまいました。 そのせいで、ヒラ会員として気楽に過ごしていた私も、いつの間にか「理事」とか「監査」とか物騒な肩書きが付くようになりましたが、これも名簿というエスカレーターの為せるわざ。会員歴…
鍋越峠を越えてくる「例のブツ」を、遅い桜の咲く公民館の駐車場に待っていると、そこへ見慣れぬ軽トラが入ってくる。誰のだろう? と見ていると、梅田さんが不敵な笑みを浮かべて降りてきたではありませんか。 こうなるとマジで業者感が半端ない。今日とい…
我らの強い味方、「盆栽のたけだ」へ行けなくなる日が来ようとは、いやはや夢にも思いませんでした。 コロナが我々の大事な補給線をいとも簡単に寸断したおかげで、同好会の誰もかれもが深刻な植え替え危機に陥ったのです。 最初の一年は何とかストックして…
山形へ行くなら、ぜひとも「盆栽のたけだ」さんへお寄り遊ばせ。 私の父方のおばあさんがそうだったけれど、山形人は優しくて親切、そんな言い伝えが、やっぱりマジなのだと納得できるのが、この「たけだ」のおじさんとおばさんなのです。 あの沼倉さんがハ…
あの時分はまだ、今より同好会がもうちょっと賑やかでありました。 そうそう、コロナの始まる前には皆で社会福祉協議会のバスをチャーターして、お隣の山形へ研修旅行に出かけたものでした。ちょうどお薬師さまの植木市が開かれている時期で、市内の大通りに…
盆栽というものを通じて、数多の樹と付き合って、泣く泣く別れたりして今にいたります。 そしてそれは、盆栽を通じて出会った人々もまた同じに思うのは、私だけでしょうか。 鬼籍に入られた方々、体の具合で足を運べなくなった方々、遠方のご子息のもとへ転…