かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

2022-01-01から1年間の記事一覧

盆人漫録(23) そして誰もいなくなった

これは、ひょっとして、孔明のワナかしら。 はるばる同好会ご一行様が到着した「盆栽交換会」会場には、車の一台、人の影すら見当たらない。一応、ここは園芸店であるからして、庭石なり盆栽の数鉢こそあれ、肝心の店主の姿もありません。 鳴子の山を少なか…

盆人漫録(22) 空城の計?

かつて諸葛孔明は、空にした城の楼上に琴を弾き、詰めかけた敵軍をまんまと欺いたそうな。 盆栽愛好家なら知っている専門誌『近代盆栽』には、毎号必ず全国各地の展示会情報が掲載されています。これを頼りに、われわれ愛好家はまだ見ぬ樹と同好の士との出会…

軍隊学校之記(21) これは部活ですか?

今週のお題「わたし○○部でした」 私、「進学研究会」でした。通称「進研」。え? そんなこと聞いてない? いいでしょうが、私だって部活の話がしてみたいのです。 所属している生徒数は、進学コースに在籍する生徒数とイコールであり、主な活動は「主要五科…

子宝日記(3) カラー写真

出てきてからのお楽しみ、というのは最早古い常識なのかも知れない。 それが息子なのか、娘なのか。はたまたどんな顔をしているのか、期待と不安を二つながらに抱えて分娩を待つものなのだろう、なんて思っていたら検診から戻った妻が「カラー写真」を持って…

盆・再考 2Dと3D

会の皆で話しているとたまに「盆栽誌に掲載されてくる写真は、やっぱり抽象的だ」という話を聞くことがあります。 樹もまた生き物ですから、雑誌と同じ樹なんてないのは当たり前だけれど、いざそいつをマネて作ってみようとすると「オカシイ、この通りになん…

教育雑記帳(37) 言葉の感度 後編

最近の子供達が、どのように語彙を増やしているのか分かりませんが、やはり現場に出ていると「言葉の感度」が低いな、と感じる子供を見かけることがあります。 まずもって、語彙習得に欠かせないのは、知っている言葉にせよ、そうでない言葉にせよ、それをキ…

教育雑記帳(36) 言葉の感度 前編

CMの台詞、ゲームの横文字、家族の会話。 これらはみな、私の語彙を育てるのに一役買った立役者たちであります。 今の子供達はテレビよりユーチューブで、自分の好きなものだけ選りすぐって観る、という恩恵に浴しているようですが、「テレビっ子」として…

蝸牛随筆(4) バッハを聴きながら

今週のお題「地元自慢」 誰も自慢してはおらぬのだけれど、いや誰も自慢しておらぬからこそ、私がそろぉっと、手を挙げて自慢せねばならぬことがある。ここは、バッハ推しの町なのだ。 わが郷里「加美町」(旧中新田町)は、宮城県北部。仙台から北に車を走ら…

弟子達に与うる記(17) やる気のメソッド

今週のお題「やる気が出ないときの◯◯」 「やる気スイッチ」を見つけてあげたり、押してあげるなんてコマーシャルを耳にしたことがありますが、そんなスイッチはこの世に存在するのでしょうか。 よし、百歩譲ってそんな重宝な(?)スイッチが「存在する」とし…

盆人漫録(21) 語り合い・秋

あんなにいつも、自分の戦車模型を錆びさせたり、わざわざ「古さ」を出そうなんてしているクセに、こんな時に限って舎利のウェザリングを失念するとは、私もまだまだ甘ちゃんであります。 そんなこんな、三日間の展示でお客さんは百数十人。終わりかけた日曜…

盆人漫録(20) 十人十白?

あはれ今年の秋も去ぬめり。秋の展示が無事に千秋楽をむかえると「ああ、今年も終わったなぁ。」という感慨が、つい口の端からこぼれてしまいます。 「いやいや、あなた、まだ二ヶ月あるから」と家内にツッコまれつつ、つらつら思うに、やっぱり今回の展示に…

蝸牛随筆(3) レジの職人芸

そのスーパーに買い物に行くと、必ず選ぶレジがある。 どんなに人が並んでいようと、前の客のカゴが溢れんばかりになっていようと、喜んでそこに並んでしまうレジがある。 そのレジを打っているのは、ササキさんという方で、その手際たるや単に「早い」とい…

塾生心得 国公立を目指す人へ 後編

定期テストではそれなりな点数を取れていたし、その時になってホンキを出せば、国公立大くらい行けると信じている受験生。これは歯が抜けるほど甘い考えであります。 「金に糸目は付けない」という親の勧めで、名の知れた進学塾の門を叩いて、みっちりコース…

塾生心得 国公立を目指す人へ 前編

ちょっと、喩え話をしましょう。 ここに自惚れの強い大工がいます。この大工、とある大金持ちに依頼されて、とにかくデカくてゴージャスな家を建てることになりました。 「金に糸目は付けない」との注文通り、一流の建材を揃えて、さて作業に取りかかったも…

軍隊学校之記(20) 加奈陀旅行記Ⅳ

お前、ホントに外国行ってきたのか? というのは、懐かしい「寅さんのおいちゃん」の台詞。 ええ、行ってきましたとも。何ならアメリカだって遠くから見てきた次第で。 流石はイギリス植民地、女王陛下の名を冠した州都ヴィクトリアより鉛色した海をのぞめば…

軍隊学校之記(19) 加奈陀旅行記Ⅲ

甘いチャーハン、ブロークンなイングリッシュに打ちのめされ、「曖昧な日本の私」すら封じられた私は、スチームが蒸してきたベッドルームで貪るように新潮文庫を読んでいました。 そこは普通「郷に入っては何とやら」だろう?と思われる方もあるかも知れませ…

教育雑記帳(34) 三つ子のキャパは 前編

よく子供が勘違いすることわざに「三つ子の魂百まで」という言葉があります。 これは金さん銀さんみたいに、三つ子が長生きするということではなくて、小さい内に身につけたものは生涯忘れない、という教訓めいたことわざです。 まぁ、そりゃそうだろ。と軽…

秋の展示会 自作解題➁

高足台 ○真柏(シンパク) 半懸崖・吹き流し風 黄色い鉢が似合う、ハイカラな奴。 最近ついに念願のシャリ(舎利)を入れたらしいのだけど、本人は「なんか白すぎんじゃね?」とブーブー文句を言っている。 「だって、急だったし・・・」「だったし?」「タミヤカラ…

秋の展示会 自作解題①

棚飾り(漫画のカット順に) 棚は山をイメージして飾る。麓に落葉樹の林が広がり、山巓には常盤木の緑が冴える。さて、床の間に拵えた小山に徳利でも提げて行こうよ。○黒松 半懸崖 安全ピンで曲付けされた苗(初心者ホイホイ)を「ムサシ」で買い求めて四年。当…

弟子達に与うる記(16) ゆかしい方へ

興味がないものを研究の対象に選んだところで、そんなものが研究になるわけがないのです。自分が「ゆかしい」と思えるからこそ、研究が出来るのです。 世の中には「大学を出ること」だけが目的のような人間もいますが、それはどこまで行っても学問と主体的に…

弟子達に与うる記(15) 学問のカタログ

大学とは、一つの大きなカタログであります。 それは学問のみにあらず。そこには様々な考え方をもつ人間が入りみ混じれ、それぞれが何かしらの「ゆかしさ」を求めて奔走したり、彷徨ったりしています。 大学一年生になった諸君はまさにそんな、どこから手を…

蝸牛随筆(2) マスク美人

近頃だいぶ美人が多くなった。 どの女性も実に目元が美しく際立っている。あのマスクの下もかくやと、イメージを膨らしている自分がある。 そうなると、マスクは一つのキャンバスみたいなもので、そこに隠された鼻であったり口や頬を勝手次第に描き込むなど…

教育雑記帳(33) 本を読む子/読まない子 後篇

日頃から「本を読まない」、語彙数が決定的に不足がちな彼らは、どのように文章を理解しているのでしょうか。 おそらく彼らは、たとえそこに分からない言葉があったとしても「分かったつもり」でそのまま読み飛ばしていることがほとんどだと思います。 これ…

教育雑記帳(32) 本を読む子/読まない子 前編

何でもかんでも二分法で考えるのは、教科書の定番になっている評論みたいで気が引けますが、こればっかりは断言できます。 本を読む子/読まない子との間には、厳然たる「/」が存在します。 教室で学習している子のとある反応を見るだけで「ああこの子は読…

子宝日記(2) つわりの話

男になむ生まれついた私は、女性が毎月のように苦しむ「生理」が如何に痛くてツラいものか、「つわり」が如何に苦しいものか、頭では理解しているつもりであるけれど、やはり正直なところよく分からない。いや、分かれないのである。 だったら無関心でいれば…

塾生心得「10月のお便り」

暑さもお彼岸まで。すっかり秋の風が入って、ようやく過ごしやすい季節になりました。 ナントカと秋の空は変わりやすいとは申しますが、受験や進学を考えているみなさんの気持ちにも様々な変化が現れてくる、というか現れてくれないと困るのがこの季節です。…

教育雑記帳(31) 渡り鳥に告ぐ

取りあえず通わせておけばよい学習塾なんてありません。 世の中にはどうも、そこのところが分かっていなくて、青い鳥を捜して塾を渡り歩くワンダー・フォーゲル(渡り鳥)が一定数あるようですが、残念ながらそうした親子に安住の地はありません。 かつて私も…

塾生心得「言語化してますか?」後編

「参勤交代」が何かを説明するためには、その歴史的意義はもちろんのこと、それを説明するための「江戸幕府」であるとか「大名」の位置づけであるとか、諸々のキーワードについても語れる状態でなくてはいけません。 これが出来ていないからこそ、結局のとこ…

塾生心得「言語化してますか?」前編

「参勤交代」とは何ぞや! という先制パンチを受けて、そいつをひらりとかわしながら「それは、江戸幕府が」云々と講釈をはじめられた君は大丈夫。多分この先の話を読まなくとも、もう既に肌身に染みて分かっていることだろうから、別の記事を読むがよろしい…

子宝日記(1) 序

もう少し早く書き出す予定が、六ヶ月も経過した今になってようやく出発する体たらくである。 暗い池に浮かんだ泡のような写真を見せられて、これがお前さんの子だ、なんて言われても実感が湧かない。抽象的で、あまりに抽象的で、私はその写真をぐるぐる回し…