かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

2022-01-01から1年間の記事一覧

国語の時間「小説の読み方」

生徒のみなさんの中には、一定数「感情移入」という方法で小説の問題を解いている人もいるようです。 作中人物の気持ちになって考える。なるほど、物語に没入して読み進めるという方策は、確かに理解を早めるものやも知れません。ですが、もしもその作中人物…

弟子達に与うる記(9)「ウチ」の限界

塾生諸氏はきっと無縁のことでありましょうが、「いじめ」なるものは「ウチ」の論理がその外側を排除しにかかる、典型的な例であります。 何らかの特徴を理由に因縁をつけて、その人物を仲間内で疎外する。するとその人物を閉め出した共犯関係にある仲間ウチ…

弟子達に与うる記(8)「オレ達」の外側

そこに外部はありますか? どうです、なかなかキャッチーな入りでしょう。はい、そこの君、どこかの金貸しのコマーシャルをパクってるとか言わないように。 私は今日は結構真面目な話をしようとしているのです。っと、そこの君は「真面目」と聞いた途端に帰…

蝸牛独読(6)「くまさぶろう」を読む#3

二、孤独なるストレンジャー くまさぶろうの「どろぼう」スキルは、前回確認した通り、どうにも人間離れしたところがあります。 前半部では物を盗み取ることに長けたスキルが、後半部では何と「ひとのこころ」を盗み取るまでに成長(?)しているのです。 それ…

盆人漫録(16) ヒマジンですが何か?

デパートにおける「何かお探しですか?」的な接客がどうにも苦手な私。 だからお客さんが樹を見ている間は、さて自分の展示の前で立ち止まってくれるかしら、と横目でお客さんの流れを確認しつつ、自分の作業をするというのが近頃の定番です。 別に派手な改…

塾生心得「それって、オフライン?」後編

勉強において大事なのは知識の量というよりむしろ、知識と知識の繋がりだと私は常々思うのです。 知識が線状に繋がっていれば、たとえそのうちのどれかを忘れているとしても、知っているところから糸を辿ってその知識を呼び戻すことが出来るのです。これぞま…

塾生心得「それって、オフライン?」前編

通分の習い始めは、まず約分の逆をするところから。今まで分子と分母を同じ数で割っていたのを、今度は分子と分母に同じ数をかける操作が必要になるわけです。 「約分の逆だ」とすぐに気づく子はきっと、何だよこの間までせっかく約分して小さくしてきたのに…

盆人漫録(15) 盆栽人の粋

近隣の盆栽会の顔なじみが尋ねてきてくれるのも、展示会をやる愉しみのひとつであります。 朋ありて隣町より来る。リポビタンや缶コーヒー、エンゼルパイの差し入れを引っ提げて、陣中見舞いに来てくれます。 このごろのコロナ流行りのせいで、久しく行き来…

弟子達に与うる記(7) 謝るならば

教育実習に行った経験がある方ならば、実習日誌を落っことすヤバさは十分にご承知でありましょう。何せこれを完成させて提出しないことには、実習に行ったことにならず、単位も教員免許もおりないのです。 最終日の打ち上げで、呑むペースを完全に乱した私は…

弟子達に与うる記(6) わが失敗録

この間は酒に関する話をしたから、補足の意味も込めてわが失敗談をしておこうと思います。 わが学生時代における大失態は二度。そしてそのいずれにも酒がからんでいるわけですから手に負えませぬ。これからを生きる君たちには、私の大失態を教訓に(?)素晴ら…

教育雑記帳(24) 両立って可能ですか?

よくある塾の触れ込みに「勉強と部活の両立をサポートします!」というのがあります。 地方へ行けばいくほど、そんなニーズが高まるように思うのは、この地に学び舎を営んでいる私だけでしょうか? なるほど勉強と部活動の両立は、普通の公立中高に通う学生…

蝸牛独読(5)「くまさぶろう」を読む#2

一、skillful robber テクストは冒頭から第一の謎を投げかけて来ます。「どろぼうのめいじん」と紹介されるくまさぶろうでありますが、何と彼は「はじめのころ」「それほど じょうずなどろぼうでは」なかったというのです。 まず「はじめのころ」とは、いつ…

蝸牛独読(4)「くまさぶろう」を読む#1

みなさんは『くまさぶろう』という絵本をご存知でしょうか? 名前のインパクトもさることながら、お話もくまさぶろうのビジュアルも、一度読んだら忘れられない一冊となることは間違いないでしょう。 では「くまさぶろう」とは一体、何者なのか? くまさぶろ…

盆人漫録(14) 構ってちゃん登場

もちろん展示を見に来てくださるのは、盆栽愛好家の方々ばかりではありません。そんな方々にこそ盆栽の面白みを発見してほしい、と展示会をやっているわけなのですが、やっぱりどうして、困ったお客さんというのもあります。 エー、そんな中には随分とエバっ…

盆人漫録(13) そのお客、玄人につき

かつての酒蔵を改装して、少しく気の利いた照明設備を取り付けたギャラリーが、私たちの展示会場、その名も「蔵」であります。 一時期は図書館にまで進出したわれわれ同好会でしたが、会員減少=鉢数のいかんともし難い減少には抗えず、もとの鞘である「蔵」…

軍隊学校之記(14) 迷子な青春

教室で喫茶の習慣をはじめたのは、受験も近くなった三年生の頃でしたでしょうか。 勉強道具より他にさしたる用具もないので、そのまま打ち遣られていたロッカーに、お湯の入った水筒と粉末タイプのミルクティーを持ち込んだのがはじまりでありました。 それ…

塾生心得 正しく選ぶ為に 後編

前回私は「義務教育」の意義を、一個人が主体的に「選択」するためのスキルを涵養するところにあると述べました。情報を読み解くリテラシー能力、そして社会と人と適切に関わっていく能力こそが、私たちに正しく判断し、そして「選択」するための足がかりを…

塾生心得 正しく選ぶ為に 前編

なぜわれわれは、自分から望んでもおらぬのに「義務教育」を受けなければならないのでしょうか? なぜこの国の大半の人々が、それを修了した後もわざわざ高等学校へ行き、今や結構な割合で大学へ進学するのでしょう。諸君はそんなことを考えた経験はあります…

国語の時間「わりきれない気持ち」

「楽しみでもあるけれど、不安でもある。」「表面的には嬉しいのだけど、心のどこかに哀しみを覚えている自分もいる。」などなど。 こんな風に、人の気持ちというものは時に複雑な様相を呈するものです。もちろんそれは小説の登場人物も同じことであり、ため…

盆人漫録(12) 壮絶なるDIY

Do It Yourself. 「自分でやってみたまえ!」それが、DIYの精神であります。 そんなことを言うものだから、マジで盆栽園並の配管設備を庭に拵えてしまう愛好家が出てくるというもの。 徳江さんの棚場に参集した同好会の一同が目にしたのは、庭の隅から隅…

弟子達に与うる記(5) 酒は量より

諸君が私のもとを巣立っていくにあたって、学問のことと共にどうしても伝えておきたいことがある。でも高校生である諸君にそんなことを教えるわけにはいかないから、これは大学に入って目の前に「お酒」というものがちらつくようになってから読んでもらいた…

些事放談「とある標本調査」

池に三八一匹の鯉がいたとします。 時にヘンな伝染病が広まって、この池の鯉たちにも感染が広がったとします。 感染した鯉には不鮮明な斑が現れて、命には別状がないというのだけれど、それがなんとも見苦しいそうで、飼い主としては、さっさと感染した鯉を…

盆人漫録(11) 枯らすまじ奮闘記

あんなにフットワーク軽く、気の趣くまま自在に方々を駆け回っていた徳江さんが、市役所の大階段から落っこちて病院に担ぎ込まれたという報せを受けた一昨年の秋。 命には別状なしとのことではありましたが、足の骨を大々的に折って数ヶ月の入院を余儀なくさ…

国語の時間「絶対と相対」

生徒のみなさん、「絶対」とは何でしょうか。「相対」とは何でしょうか。 ふむ「絶対とは他に対立するものが無い状態」で「相対とは他との関係の上で成立するもの」と仰るか。その通り、辞書的な意味としては申し分ありませんね。 でも、ぶっちゃけそれって…

作文の時間(12) 無段落ボーイのエチュード

作文教室を受講している子達の中で、毎年決まって現れるタイプに「無段落ボーイ&ガール」というのがあります。 もちろんわざとやっているわけではなくて、本人はいたって大真面目。お話の流れにのって、最後のオチまでたゆむことなく前進を続け、ふと振り向…

盆人漫録(10) 徳江さんを想う

まだ私が自分の軽トラを買う前、展示会の準備で徳江さんの軽トラを運転することになった時のことでした。 自動車学校を卒業して以来、一度もまわしたことがなかったマニュアル車。それを急に預けられて悪戦苦闘、ギッコンバッタンしながらも、何とかかんとか…

些事放談「いらない屈折」

「先生、ボクきのうね、みんなでバーベキューしたよ!」「おととい家族とプールに行った!」 問わず語りに話してくれる子供達の報告を聞く度、複雑な思いにかられている自分があります。 「そいつはよかったな! で、何を食べた?」とか「いいなぁ、プールで…

弟子達に与うる記(4) 学問を血肉化せよ

本で読みかじって知った気になっているだけ。それを自分の言葉に落とし込むことも出来なければ、そこから自分の考えを新たに出発させることもできない。それは血が通っていない「借り物」の思想であります。 そんな「人のフンドシで相撲を取る」人物のタチの…

弟子達に与うる記(3) 人のフンドシで

この間の読書の話で、ちょうど「消化」についてふれたので、忘れないうちに補足をしておくことにします。 本、あるいは大学の授業で皆さんは「理論」や「思想」というものを学び、必要に応じてそれを吸収することでしょう。 精神分析、民俗学、テクスト論、…

盆人漫録(9) アリの図書館戦争 下

今よりもまだ頭数に余裕があった当時、展示会の当直は二人一組。 これが一人だと結構ツラいもので、このご時世だと検温と連絡先の記入をしながら、「この樹って、何ていうの?」とか、お客さんの質問にも応えなければいけません。 いつものこぢんまりした展…